会頭挨拶

 この度「第122回日本小児科学会学術集会」を2019年4月19日(金)〜21日(日)の3日間に渡って開催させて頂くことになりました。開催場所としては、JR金沢駅を出てすぐ左右に広がる複数の施設を選びました。主会場はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の拠点でもある石川県立音楽堂です。それに加えて、ANAクラウンプラザホテル金沢、ホテル日航金沢、金沢市アートホール、ホテル金沢など、いずれも近接した施設を会場としました。金沢での開催は、2006年に前任の小泉晶一教授が主催されて以来13年ぶりとなります。この間、新幹線の開通、新しい駅の完成、金沢城公園の環境整備など、街はすっかり様変わりしました。医局員一同力を尽くして準備し、みなさまを新しい金沢にお迎えしたいと考えています。
 学術集会のテーマは「ここに生まれた君を守り、未来に輝く君を支える」としました。医療に限らず、様々な分野で都市部への集約化が行われています。また小児医療の中でも、専門分野の機能強化のために医療資源の集約化・効率化が進められようとしています。それはそれで大切なことではありますが、一方で守らなければならない地域医療があります。地方だからこそできることがあります。白山にはブナの原生林があります。ブナが芽吹き、ひこばえが育ち、やがて長い年月を経て美しくたくましい木へと育って行く姿に教えられます。私たち小児科医の原点は、この地に生まれたこどもたちが健やかに育つことを見守り、優れた人材へと成長することを支えることではないかと信じています。また、同時に、この地で小児医療に尽くすことを決意した若い小児科医が、最高レベルの医学を学び、最新の医療を実践できるよう支援することも先達の務めと考えます。患者であるこどもたちと、こどもたちのために活躍する小児科医の両者に向けて、本学術集会のテーマを応援のメッセージとして送ります。
 学術集会では国際的に活躍する小児科医の他に、小児医療の枠を越えて、わが国の医学研究のトップリーダーの方々にも招待講演をお願いしています。最先端の医療技術の未来を俯瞰しながら、ナラティブの大切さを再認識するための企画も準備します。プログラムの枠外では、音楽、文学、スポーツがキーワードとなる試みも準備中です。
 4月半ば過ぎ。金沢は長く暗い冬から解放され、花々が咲きみだれ木々に柔らかな緑の葉が輝く季節が始まります。街並みには、金沢駅東口のもてなしドームと鼓門に象徴される、古い伝統と新しい挑戦が混在しています。伝統文化が日常生活の中で息づき、泉鏡花、鈴木大拙や室生犀星ら文豪ゆかりの場所が点在しています。この街の息遣いを感じながら、新しい小児科学のために熱い、心揺さぶられる議論を交わしましょう。そして、美味しい酒と料理を味わいながら、楽しい3日間をお過ごし下さい。お待ちしています。