開催趣旨

テーマ:「原点回帰 -神々の生まれいづるところで、日本人の死生観、臓器提供・移植を再考しよう-」

(2015年3月28日作成)

 日本の移植医療は欧米あるいは韓国、台湾と比較しても停滞しています。1997年10月臓器移植法が施行され、2010年7月改正されましたが、死体からの臓器提供はさらに減少しました。特に、腎臓移植の待機患者は12,000人を超えますが、医学的、合法的にも移植可能な心停止ドナーからの腎臓提供が激減してしまいました。平均待機期間は17年を超え、透析医療が破たんする危機に面しています。なぜ、臓器提供は増えないのでしょうか?移植成績は良くなり、システム整備、医療保険制度、法整備、啓発運動は考えうることを実現して、欧米先進国に比肩する状況を構築しています。しかし、理屈で納得ができても、我々には多かれ少なかれ、「心(こころ)」の部分にこだわりがあるので、漠然とした抵抗感を覚えます。この「心」とは何でしょうか。そこで、原点に帰り、この感情を司る日本人の死生観、脳死と臓器提供、移植について、科学的、論理的、建設的な観点から考えてみたいと思います。

 私が生まれ育った鳥取県米子市に35年ぶりに帰郷してみると、日本最小人口の県で、年々少子高齢化が進んでいるのに驚きました。都会や他県の人からみると、鳥取・島根、いわゆる「山陰地方」のことを知る人はあまり多くありません。このような状況で、第49回日本臨床腎移植学会を米子で主催することになりましたが、山陰発信の素材・人材をもとに、「全国レベルの内容の高い学術集会」と「来てよかったと思っていただけるおもてなし」ができるかを、地元の人々の力を借りて考えてみました。
 近隣の歴史や名所旧跡、観光地を調べ、知人、友人に相談したところ、平成の大遷宮と、千家国麿さんと高円宮典子さまのご婚約で注目を浴びる出雲大社は、日本の神々が生まれ、その文化が松江、米子、鳥取を経て大和、北陸にまで拡がっていった出発点であることがわかりました。古事記、日本書紀、出雲風土記に記されているように、イザナギ、イザナミから始まって、皇室と出雲大社宮司家につながる日本人の精神基盤がここにあります。最近の文献、書物を読んでみると、古代出雲王国は出雲から山陰、山陽、畿内、北陸までを治めるような王国でしたが、「国譲り」によって大和朝廷が日本を統一し、代わりに出雲大社を建立して霊界を治めるようになったようです。神話と歴史のロマンに触れながら、我々日本人の心の基盤となっている神道の死生観を探ってみたいと思います。
 また、松江市出身の故・中村元(なかむらはじめ)先生は、仏教界の学術団体である「日本印度学仏教学会」の創設に貢献された仏教の世界的権威であり、死後、島根県大根島に記念館が創設され、その理事長は安来清水寺の清水谷善圭管主が務めておらえます。日本四名山のひとつに数えられる、米子から登る霊峰・大山(だいせん)は伯耆富士とも呼ばれ、仏教(大山寺)の修行場として栄え、「神がおわす山」として崇められてきました。境港には水木しげるさんの妖怪、松江には小泉八雲とその曾孫・小泉凡さんが描く怪談が定着しています。水木さんは幼少時に、「のんのんばあ」に連れられて境港・正福寺の「六道絵図」を見たことが彼自身の死生観へ大きな影響を与えているようです。一見すると「気味が悪い」と思われるような妖怪や怪談が、地元の人々の心に残って伝えられているのは、この地が、海や山、岩や湖、昼と夜、生と死などの境界に霊や異界を感じさせるような自然環境と歴史があるところだからだと思います。

 かつて、臓器移植法が成立する以前の1990年ごろ、日本移植学会は故・太田和夫先生を委員長として社会問題特別検討委員会を立ち上げ、「神道における生命倫理と臓器移植」、「仏教における生命倫理と臓器移植」というテーマで、それぞれ、宮司であり医師である人や、僧侶であり大学教員である人などを招いて、日本人根底の死生観、脳死、臓器移植に対する考えをわかりやすく解説してもらい、移植医と質疑応答された記録が出版されていました。
 臓器移植法が成立、改正され、ネットワーク、コーディネーター、医療保険制度、医療システムが整備された現在にも、通じる問題が提起してあります。今回の企画では、神道、仏教、キリスト教、移植医の代表者による講演やシンポジウムを企画し、冒頭のテーマ:「原点回帰-神々の生まれいづるところで、日本人の死生観、臓器提供・移植を再考しよう-」に取り組んでみたいと思います。
 「臓器提供」と「臓器移植」は違いますが、一般人にはこれが混同されています。神道は、魂が肉体から離れる遷霊の儀式が済んでいない状態で肉体にメスが加えられると考えて、「臓器提供」に反対されます。仏教は、捨身飼虎にあるように慈悲に基づく臓器提供には賛成ですが、移植してまで生きようとする煩悩のために「臓器移植」に反対されます。公表されてはいませんが、臓器摘出手術は、手術室の中でコーディネーターの「黙祷」という言葉で、そこに居合わす全員が黙祷をささげた後、執刀が始まります。私は、これは神道が求める「魂を肉体から抜き取る遷霊の儀式」と思っています。臓器移植で生きながらえることが仏教でいう煩悩ならば、輸血や手術で生きながらえることも、医療行為そのものが煩悩になってしまうでしょう。キリスト教は一神教で、人は神が創造した兄弟ですから、「愛」と「Gift of Life」という考え方で、脳死後の臓器提供にあまり抵抗はないようですが、心停止も含めて死があらためて議論されています。神道の自然崇拝の上に中国から伝来した大乗仏教が融和して形成された日本人の死生観、あまり意識することがない「心」を理解しなければ、臓器提供・臓器移植の普及を進めることはできないでしょう。以上の観点から、各方面の専門家にご登壇の承諾や今後の依頼を考えています。

 いっぽう、臨床腎移植に関する一般的なテーマ、シンポジウムはこれまでの学会を踏襲するような形としたいと思っています。ノーベル賞を受賞された山中伸弥先生を中心とするiPS細胞の研究、臨床応用は格段に進化し、再生医療の分野が脚光を浴びています。網膜や神経、血管などの失われた細胞、臓器の再生、膵島細胞の再生、創薬への応用、我々の分野では、臓器移植後の免疫寛容を誘導する細胞再生、究極的には機能不全になった臓器の再生が期待されています。しかし、人工臓器や異種移植の応用もまだハードルは高いようで、まだ当分は末期腎不全の患者さんには腎臓移植が最良の治療法です。米子市出身で京都大学iPS研究所副所長の戸口田淳也先生にiPS細胞研究の最先端のご講演の了解をいただいております。

 学会開催と同時に、鳥取県、島根県、米子市、近隣自治体を含め、地元財界、政界、教育界、医学界が協力して、山陰が地域として全国からの参加者を迎えるとともに、地元市民の健康福祉の啓発、山陰地区を活性化するMICE活動(学会(Meeting)、企業の研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会・見本市(Exhibition/Event)の頭文字)の促進に寄与して、山陰の子どもや孫たちのために、故郷のためにお役に立つことができれば光栄と思っています。
 開催内容、特別講演やシンポジウムの演者、演題募集のテーマ、会長推薦のお店やオプショナルツアーなどがまとまり次第、随時HomePageに追加、刷新していきます。全国から米子に来ていただく方法「交通アクセス」をHPに載せます。会長の独断と偏見で意見も付け加えていきますので、演題の準備とともに交通、オプショナルツアーもご考慮ください。みなさま、米子でお会いしましょう。

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