会長挨拶
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第61回日本アレルギー学会秋季学術大会 会長
日本大学医学部先端医学系
分子細胞免疫・アレルギー学分野
羅 智靖

 此の度び、第61回日本アレルギー学会秋季学術大会の開催を担当するに当り、一言御挨拶申し上げます。  およそ一世紀前の1906年、ウィーン大学の小児科学教授von Pirquetによって、生体の量的、質的、時間的な動的変容を洞察したアレルギーの概念が提唱され、アレルギー学の歩みが開始されました。日本アレルギー学会は、基礎から臨床に亘る領域横断的な真にユニークな学会として、今日までの60年、アレルギー疾患の克服を目標にして、病因、病態の解明、そして治療、予防へと大きく貢献し発展して来た足跡は、昨年の学会展示に示された通りであります。本学術大会においては、この諸先輩方の大いなる蓄積の下に、新しいアレルギー学の構築に向けた第一歩を踏み出すべく、少しでも貢献できますよう念じております。8年振りに基礎の側が担当する学会になりますが、その意味を思料する時、また大きな責任も感じています。

 学会の主題を「アレルギー、重層するシステムの変調 〜歩き始めよう ボトムアップの新しいアレルギー学へ〜」Allergy and dysregulation of complex biological systems : Take a step forward for bottom-up approach for new allergologyとさせて戴きましたが、ここに先ずその背景を簡単に説明致します。生命・生物がシステムであるというのは、特に新しいことではなく、現在の様に分子生物学が隆盛になる以前にあってはもっと自然に考えられていたものと思われます。生命がシステム全体としてどの様に作動しているのかという視点です。生命の動的(ダイナミック)なシステムは単に個々の分子によって生み出されるのではなく、相互作用によって初めて生み出され、創出されるものであり、時間の要素も含めてその動的な特性を知る必要があるということです。たとえばアレルギー研究においても、個々のアレルギー疾患の現場からの詳細な臨床研究や個々の病態の解析から、錯綜するシステムの変調に対応して行くというボトム・アップのアプローチが必要とされています。網羅的な解析などから抽出された特定の理論的な枠組みから、全体の制御を目指すトップダウンの研究によるリードも必要ですが、その方向のみで生命現象、さらにアレルギー疾患などを制御することは難しいと思われ、自ずとボトムアップのアプローチの重要性が強調されてくるわけです。アレルギーの分野の膨大な臨床研究の蓄積は、ボトムアップの方向からの研究の宝庫です。基礎の側からも実際の臨床研究の発表の場に多数参加することによって、トップダウンのアプローチとの接点も見出される可能性があり、アレルギー疾患の解明、治療に向けた新たな臨床あるいは基礎的な研究(ミドル・アウト)の展開も生まれて来るのではないでしょうか。そのためにも、基礎と臨床の先生方が一堂に会して討論することのできるシンポジウムやワークショップなどの場を出来るだけ多く設けたいと考えています。

 近年IgEの研究領域は新たな展開を見せており、ボトムアップの解析の例としても本学会のトピックスになるテーマのひとつとして取り上げ、新たな出発点にできたらと考えています。単にアレルギーとの関連のみではなく、その生理的な意義をも含む多彩な方面への展開を視野に入れつつ、またその標的となるマスト細胞(肥満細胞)にも焦点を当ててゆきたいと考えています。学会予告にご案内させて戴いております様に、国際シンポジウムの開催などにも留意しつつ、臨床各科の先生方の御指導、アドバイスを受けながら臨床研究や医療分野を充分カバーできます様に、またアンケートに対して皆様から寄せられた貴重な御意見を尊重して、微力ではありますが、本学会の伝統を受け継ぎ領域横断的な特徴を最大限生かせる様努める所存ですので、皆様の御指導、御鞭撻を賜ります様お願い申し上げます。