
永遠の三角形
(日本超音波医学会第84回学術集会会長挨拶)
この度の東日本大震災により被災された方々にこころよりお見舞い申し上げます。
本学術集会の開催については、日本超音波学会として検討を重ねてきましたが、最終的に開催することに決断いたしました。もとより、華美な部分、祭典的な内容はそぎ落として企画・準備して参りましたので、開催にあたっては唯一の懇親の場であった「夕べの意見交換会」のみを中止とし、これ以外の企画内容には大きな変更を加えずに節電に配慮しながら進めることといたしました。被災された方々、また支援活動に尽力されている先生方には、配慮に欠けるとお叱りを受けるやも知れませんが、超音波医学に携わる者の出来ることは「学問の火を絶やさないこと」と考えた上での決断、何卒ご容赦、ご理解いただきたいと願うのみであります。
【学会】学術集会の準備をしながら考えることは、常に「学会とは何のためにあるのか?」という疑問です。私は「議論」の場と結論しました。1人でわかったつもりでいても、他人から思いがけない意見をいただいて、事態が大きく好転することはしばしば経験することです。会長の仕事は議論が活発になる仕組みを作ることだと考え、まずは場所を交通至便の品川に準備させていただきました。
【永遠の三角形】日本超音波医学会の素晴らしさの基本は、医、工、技の3者の連携です。他にこの素晴らしさを持つ学会はないのではないかと思っています。しかし、3者がただ通りすがるだけ、あるいは一方的に話を拝聴していては無意味で、学会においては大いに「議論・交流」する必要があります。
【3つの特別企画】領域を超えた横断的企画として、特別企画「超音波による硬さの評価」と「学会とは何か?」を、循環器の特別企画として「心臓を診る」を、それぞれ用意しました。超音波医学の各領域で「硬さの評価」が話題の焦点となっていますが、循環器医としても組織の硬さにはとても興味があります。心臓に悪性腫瘍は稀ですが、心筋は収縮期に硬くなり拡張期に柔らかくなる組織で、もし硬さが計測可能となれば、硬さは非常に重要な心機能指標となることは間違いありません。さらに、硬さとは〔外力÷歪み〕ですが、超音波で外力や圧力を計測することは難しく、むしろ歪み(strain)と硬さを計測できれば自然と外力(圧力)も推定できるであろうという淡い期待があります。すぐには叶わない夢ですが、超音波医学の大きな夢です。この夢の実現のためには、まずは動かない臓器で硬さの評価法が練り上げられる必要があります。
【一般演題と症例報告】特別演題企画などは、知識を包括的に吸収・整理でき、意義深いのですが、最新の研究内容は、まずは一般演題の形で世に問われます。言い換えると、一般演題こそが「議論」を最も必要としています。症例報告は、学会誌等では「impact factorに寄与しない」として排除される傾向にありますが、とても残念なことです。多数例で検討した方法論の発表は、10年もすれば価値がなくなりますが、症例報告の多くは不滅です。症例報告の一部は展示会場のオープンな舞台で発表していただきますので、ポスターを含めて、活発な議論を期待します。
【日本語】「議論」の場と企画の準備に加えて、会長として「議論」のための言語を日本語に統一させていただきました。世界的レベルの研究内容は国際学会(あるいは外国の学会)で大いに議論すべきですが、「世界的レベルの研究」を誕生させるには、まず母国語でじっくりと考え、みなで議論することが必要です。多くの日本人にとって英語による深い議論は不可能です。各企画の名称は日本語に統一し、外国人は招請せずに外国に留学した専門家から日本語で外国の様子を話していただく企画を組みました。日本に定着した外来語(ポスターなど)を除いて、すべて日本語でよろしくお願いいたします。
1年以上、多くの人々の協力・支援のもと、この会の準備に邁進しましたが、至らない点は多々あると思います。何卒ご容赦下さい。そして、3日間の学術集会、活発な議論をよろしくお願いいたします。
平成23年4月吉日
日本超音波医学会第84回学術集会 会長
東京大学医学部附属病院検査部
竹中 克