食道胃接合部癌は解剖学的特性より、胸腔と腹腔いずれにもリンパ節転移を来す可能性があり、内視鏡治療、外科治療のいずれにおいても、胃癌に準じるか食道癌に準じるか、施設ごとによって治療方針が異なるのが現状である。ESD治療後の追加治療の適応や外科治療における切除及び郭清範囲に関しても様々な議論がある。また、治療方針を決める上で重要な臨床診断（深達度、腫瘍中心の位置、食道浸潤長など）が難しいことも特徴として挙げられる。本セッションでは、各施設における診断、治療アルゴリズム及びその治療成績を提示して頂き、食道胃接合部癌に対する治療の現状を示す。

手術用ロボットを用いた胃癌手術は現在、限られた施設でのみ行われているのが現状である。多関節鉗子、手振れ防止機構によってより精巧な手術手技が期待される一方、高額なコスト、安全性、長い手術時間などの問題点も指摘される。また従来の手術方法と比較したメリットに関しても明確な答えは得られていない。日本ではcStage I/II胃癌を対象としたロボット胃切除の前向き臨床研究が先進医療として行われ2017年に登録が終了した。また今後の数年間で、新しい手術用ロボットが市販されることが予想されている。現時点でのロボット胃切除の長所短所、胃癌治療におけるこれからの位置づけについて発表する。

Conversion surgeryとは、oncologicalに切除不能と判断したStage IV症例に対して化学療法を行い、これが著効して切除不能の原因となっている病巣が縮小・消失した場合に行われる手術である。その手術においては、主に原発巣とその時点で遺残した転移巣を切除する。化学療法の進歩とともにこのような手術が行われるケースが増えているが、その適応・効果については一定の見解はない。本セッションでは標的病変別に各施設で行われているconversion surgeryの定義・治療法・成績について報告する。

国内外の胃癌外科治療のエキスパートが胃癌外科治療の最前線について発表する。

近年、胃疾患に対する内視鏡診断・治療の進歩は目覚ましいものがある。本セッションでは、内視鏡による胃癌検診、胃癌に対する精密な内視鏡診断、ESD手技、ESDの成績、内視鏡を用いた全層切除のトピックに関する現状と将来展望について、国内のみならず国外のエキスパートが、これらについて発表する。

胃癌に対する標準治療薬は殺細胞薬剤、HER2標的薬、VEGFR2阻害剤が含まれ、免疫チェックポイント阻害剤の導入も間近に控えている。
一方でこれらの治療の有効性は十分ではなく、また胃癌では様々なネガティブな臨床試験結果も報告されており、分子生物学的な知見に基づく効率的な新薬開発の必要性が示唆される。本シンポジウムでは進行胃癌に対する新規治療開発の現状について討論する。

胃癌の治療成績の進歩は、新規分子標的薬剤、免疫チェックポイント阻害剤などの新薬開発のみならず、市販後臨床試験の積み重ねによる生存期間の延長も大きな役割を果たしている。術前後での工夫、より強力な併用療法の開発、患者のQOL向上を重視した非劣性試験、全身状態の悪い患者や高齢者に対する開発など、ベストプラクティスにつながる開発が、多彩な病状を呈する胃癌においては重要である。本セッションでは、様々な国や臨床試験グループでのこのような治療開発について議論する。

ストップ胃癌のためには、ピロリ菌除菌後の正確な発がんリスク予測、早期胃がんのリンパ節転移予測、免疫チェックポイント阻害剤の奏効性予測、進行胃がんの新規治療法開発などの多くの課題がある。その解決のために、胃がん細胞での分子異常の解明が重要と考えられて来たが、浸潤した免疫細胞、胃がん組織に存在する線維芽細胞なども重要と認識されるようになってきた。解析手法も、従来のゲノム解析に加えて、エピゲノム解析、免疫細胞の解析なども重要になり、PDXも用いられるようになってきている。本シンポジウムでは、胃がんを腫瘍全体で理解し、新しい診断と治療を作る試みを議論する。

コンパニオン診断、ゲノム医療、AI技術の病理診断への導入により胃癌の臨床病理も大きく変わりつつある。本シンポジウムでは胃癌の研究者および病理に携わる研究者により、新しい胃癌の臨床病理へ向けての方向性を話し合う。

食道胃接合部癌の外科治療において、腫瘍の位置や大きさ、組織型に応じて、縦隔リンパ節と腹腔内リンパ節の郭清範囲、さらに胃切除術式と再建術式が適切に選択される必要がある。進行症例に対しては術前や術後の補助化学療法が扁平上皮癌は食道癌に、腺癌は胃癌に準じて行われているケースが多い。近年では治療成績を改善する目的で三剤併用療法や、局所制御能を向上させる化学放射線療法の有用性も期待されている。本セッションでは、低侵襲治療から集学的治療に至るまで食道胃接合部癌の治療に関して斬新な考え方や新しい方向性などを議論する。

洗浄細胞診陽性胃癌の予後が不良であることは周知されているが明らかな治療方針は定まっていない。CCOG0301により手術+S1術後補助療法が現時点での暫定標準と考えられるが、今後発表予定のJCOG0501の結果にて術前化学療法についての評価がなされると思われる。術後補助療法として多剤併用療法が試みられるようになった現在、これまでの治療成績をもう一度まとめておく必要がある。本セッションでは各施設で施行されているCY1胃癌に対する治療法とその成績を議論する。

予後不良な大動脈周囲リンパ節転移を有する進行胃癌に対しては、術前化学療法を行うことにより、根治切除率の向上や長期予後の改善を期待して治療開発が行われきた。本邦における現在までの標準的治療としては、術前にS1/CDDPの2剤を併用投与した後に拡大リンパ節郭清を行う外科切除が、安全性・有効性の両面よりバランスが良く治療効果が高いと考えられている。長期予後のさらなる改善をめざして、術前化学療法のレジメン，術後補助化学療法の是非、薬剤の投与量や投与間隔、リンパ節郭清の範囲など，検討すべき課題は多い。本セッションでは大動脈周囲リンパ節転移を有する高度進行胃癌に対する治療戦略とその成績を示し、議論する。

胃癌に対する切除後の再建については、切除範囲によって複数の方法があり、胃癌治療ガイドラインでも標準的な再建方法の記載はない。幽門側胃切除後のB-I法とR-Y法でQOLや罹患率・死亡率を比較した臨床試験の報告があるが、胃全摘および噴門側胃切除後の再建方法については、十分な検討がなされていない.　胃全摘の再建方法としては、R-Y再建を選択されることが多い一方で、噴門側胃切除には再建方法の選択に差があり、再建法の違いが患者の生活に及ぼす影響を科学的に比較検討する意義は大きい.　本セッションでは胃上部胃癌患者に対する胃全摘・噴門側胃切除の再建法とその成績を術後QOLに重点を置いて議論する。

進行胃癌に対する腹腔鏡下胃切除についての明確なエビデンスは乏しく、その適応については意見が分かれるところである。すでに進行胃癌への適応を拡大している先進施設が、術中の腫瘍の取り扱いや術野展開の工夫にくわえ、その中長期成績から、現時点での適応と問題点、その解決策について論ずる。

S-1単剤による術後補助療法が標準治療となり10年を越えた。標準治療の選択枝もS-1単剤からXELOX (CapeOX)が追加された。ACTS-GCが行われた当時の胃癌取扱い規約は第13版であったが、本秋に第15版に改訂される。改定後のステージ分類はステージIIIの枠組みに大きな変化が見られる。術前および術後補助化学療法を含めたステージII/III胃癌の今後の治療方針を考えるうえで、第15版ステージに基づいた胃癌術後補助療法の成績をまとめておく必要がある。このセッションでは各施設における最近の進行胃癌の治療成績を補助化学療法と関連付けて発表する。

胃癌取扱い規約15版stage分類
（マークした部分は第14版からの変更点）

医療水準の発達により平均余命が延長し、総人口に占める65歳以上の高齢者割合の急速な増加を認め、胃癌患者における高齢者患者の割合も増加し、その治療戦略は重要な課題である。耐術能があれば高齢者に対しても積極的に癌の治療を行うべきとの考えがある一方で，高齢者は併存疾患による他病死のリスクも高く，臓器機能障害を有する患者が多いことから、無治療あるいは緩和的治療への移行を検討すべきとの考えもある。周術期における合併症のリスクも大きくなるため、手術適応そのものを含めて慎重な対応が必須である。本セッションでは高齢者胃癌患者に対する治療戦略とその成績を示し、将来への展望も含めた議論を行なう。

残胃癌の手術は、初回手術の良悪性・再建方法によってリンパ節郭清の範囲が異なり、近接臓器への固着浸潤がある場合は合併切除も必要となるため、技術的な難易度が高く、通常手術の知識・経験を基にした慎重な対応が必要である。近年では、残胃進行癌の予後は通常の初発上部胃癌と比較して、不良の傾向にあるとの報告がある。術式の多くは残胃全摘となるため、術後補助化学療法のコンプライアンスが不良になる傾向もあり、通常の初発胃癌で行われる胃切除＋補助療法で十分な治療効果が得られているか検討が必要である。本セッションでは残胃癌に対する治療戦略とその成績を示し、集学的治療を中心に議論する。

腹膜播種は周知のとおり胃癌治療における大きな壁の一つであるが、腹腔内治療や全身化学療法の進歩とともに生存期間の延長がみられるようになっている。このセッションでは、臨床の現場におけるすべての分野にわたる新しいチャレンジと現状の治療について、今後の期待を含め議論をする。

胃癌の深達度診断は治療方針の決定に不可欠であり、例えば、ESDか外科手術、縮小手術か定型手術、術前補助化学療法の適応などの選択に直結する。一方、通常内視鏡、超音波内視鏡、胃レントゲン、CTなどのモダリティが、深達度診断に用いられている。本セッションでは正確な深達度診断への取り組みについて報告する。

早期胃癌に対するESD術前適応における適応拡大病変や、根治度評価における適応拡大治癒切除については、その長期成績が明らかになってきている。一方で、更なる適応拡大の可能性や非治癒切除例の対応などについて議論されるようになってきた。本セッションでは、適応や根治度評価の観点から、胃癌ESDの新たな展開について報告する。

食道胃接合部癌に対する至適な切除範囲はいまだに議論の余地があり、選択される術式は噴門側胃切除から、下部食道切除＋下縦隔郭清、更には食道亜全摘術＋上中縦隔郭清までに至る。本セッションでは、各施設で施行されている接合部癌に対する、腹腔鏡または胸腔鏡手術におけるリンパ節郭清の工夫やQOLに配慮した再建法などの手術手技をビデオで提示する。

JCOG0110の結果を受け、胃全摘の標準術式は現行のD2-No.10郭清を伴う胃全摘となる。そのため今後、早期胃癌のみならず大彎線にかからない上部進行胃癌に対しても腹腔鏡下胃全摘が普及していくと考えられる。腹腔鏡手術が進行胃癌に対しても行われるようになると腫瘍が胃脾間膜に直接浸潤していたり、体上部の大彎線にかかる場合は脾門部の完全郭清のためには脾摘が必要であり、その手技の習得は必須である。本ビデオセッションでは脾合併切除を伴う腹腔鏡下胃全摘のコツとピットフォールを提示する。

腹腔鏡下胃全摘術は再建時の視野展開や吻合手技が難しい。再建法は様々であり、未だ標準化されているとは言い難い。再建における手技上の工夫、手術の順序、視野の展開、デバイス使用、の工夫などについて発表するとともに各術式の利点欠点を論ずる。

早期胃癌に対するESDは、標準的な治療法として全国的に普及している。しかし。依然として切除困難な症例に遭遇したり、偶発症の対応に難渋することがあり、さらなるデバイスや機器の改良、ストラテジーの工夫、偶発症の対応や予防が望まれている。本セッションでは、胃癌ESDの技術的な新たな取り組みについて動画を用いて発表する。

GISTは主にc-kitやPDGFRA遺伝子異常が原因で発症する。これらチロシンキナーゼを標的とするイマチニブ等分子標的薬が導入され、GISTの診断治療体系は大きく変わり、その予後も画期的に改善した。2004年以来、欧米のNCCNやESMOガイドラインが出版されているが、必ずしもアジア人患者の治療に適合するかは議論があり、2016年にはアジアのGIST診療ガイドラインも出版された。このセッションではアジア各国のエキスパートがGISTの診断・治療の現状と展望を発表する。

胃がんの罹患率・死亡率の地域差を含めた国内外の現状と将来推計、胃がんの原因について明らかになっていること、未だに分からないこと、そして、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌を含む予防や内視鏡などを用いた胃がん検診による罹患率・死亡率の減少効果と予想される不利益についての現状を紹介すると共に、今後の胃がんの予防法・検診法のあり方について議論する。

生検組織、ESD組織、胃癌組織の病理学的記載は胃癌取り扱い規約、WHO分類、Lauren分類、NET分類など様々な分類を用いて記載されている。一般の臨床医にとって、それぞれの分類や病理で使用している用語がどのように用いられているのか、解っているようで解らないことが実情と思われる。特に若い内科・外科医が病理診断の意味を正確に知ることにより、適切な治療が行われると考えられる。この教育セッションでは胃癌の病理に関わる臨床医の疑問を病理学的に解説する。

胃癌研究会が胃癌学会に発展し20年が経過した。この間、外科治療ではD2郭清が世界で認知されたが、大動脈リンパ節などの予防的拡大手術は臨床試験で否定され、低侵襲手術として腹腔鏡手術が広がっている。化学療法の進歩は著しく切除不能症例の延命はもちろんこと補助化学療法が進行癌治療になくてはならないものになっている。また、早期胃癌の多くが内視鏡治療で治癒されている。胃癌罹患数の減少、高齢者の増加、接合部癌の増加などが予測される次の20年どのような変化が胃癌治療に起きるのかは皆の興味を引くことである。このセッションでは各分野の権威が胃癌治療の未来を大いに語る。

第4回を迎えたESD研究会では、内視鏡医にとってstimulativeなテーマをとりあげ、胃癌学会により 内視鏡医が関わっていくきっかけとなるような会として参ります。第一部では、「内視鏡医における医工連携」と題して、内視鏡医が、日本発のイノベーションを内視鏡に絡めて起こしていくにはどうすればよいかを「医工連携」を鍵として考えてみたいと思います。医工連携に携わっていらっしゃる二人の先生にご講演をお願いする予定です。第二部では、「beyond ESD: ESD技術を用いた新しい方向性」と題して、ESDの技術を新たに臨床応用していく方向性を探ってみたいと思います。また、第三部は症例セッションとし、診断・治療に苦労した症例についての検討を、若手の先生がたに発表討論していただき議論を深めたいと考えております。第二部については全国の内視鏡医のみなさまの積極的な応募を期待いたします。