脳神経核医学とは

 脳神経核医学は、脳の機能画像をつくるためのより効果的な診断薬剤の開発、精度高い機械の開発などの基礎的な研究から、脳疾患の早期診断を行い治療に役立てる臨床研究までを包括しています。これらに従事する研究者の情報交換のため本研究会が機能するように期待されています。

 核医学は、アイソトープで目印をつけたごく微量の放射性医薬品を用いて、病気の診断や治療をする医学分野です。これは、渡り鳥の足に場所・日時を記した小さなリングをつけ、ある期間を経過させ、違う場所で渡り鳥のリングを回収し渡り鳥の生態を知る方法に似ています。さて、放射性医薬品(=渡り鳥)を体内に投与すると特定臓器に取り込まれそこで放射線(=リング)を取り出します。脳を映し出すには、分子量が小さく、電荷を持たずまた脂溶性である性質が必要です。体の外から脳からの放射線を特別なカメラで測定し、コンピュータで脳血流や脳代謝の画像を作成します。

 核医学検査には、SPECT、PET検査などがあります。本年1月現在、全国でSPECT装置は1,797台、PET 装置は44台が稼働しています。PET検査の方が、脳機能の画像としては優れていますが、SPECT検査は、製薬会社が薬剤をつくり、全国で供給を受けられますが、PET検査は、サイクロトロンで薬剤をつくる必要がありますので、施設が限られています。近年、高齢化とともに脳血管病変や痴呆の症例が増え、介護などが社会問題となっています。例えば、脳卒中や痴呆の初期には、MR(磁気共鳴画像)による脳の構造の変化は認めません。しかし、既に脳内の血流やエネルギー代謝は異常を来しており、核医学の手法でこれらの病態は的確に把握できます。因みに認知症の診断は核医学検査の方がMRより約12ヶ月早く診断できるといわれています。

SPECT :シングルフォトン断層撮影法
PET :ポジトロン断層撮影法
(SPECT、PETはいずれも脳機能検査法の一種)