情報・広報・啓発委員会より

第250回関東甲信越地方会 最優秀賞受賞演題(2018年12月8日開催)

Student Award

進行性の臓器障害に対して保存治療を強化することにより外科治療を回避できた急性B型大動脈解離の一例

島田春貴1)、秀野公美1)、服部竜也1)、中田淳2)、寺師直樹2)、大野礼2)、堤正将2)、浅野和宏2)
太良修平2)、山本剛2)、清水渉2)
1)日本医科大学医学部5年
2)日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療科

【背景】急性B型大動脈解離に重症臓器虚血を合併した場合、外科治療またはステントグラフトによるエントリー閉鎖や虚血に陥った分枝血管に対するステント留置が推奨されている。しかし、これらの治療は、内科治療単独と比較して院内死亡や神経学的合併症の発生率が高いとの報告もあり、発生した臓器障害が解離に伴う虚血によるものかどうか、慎重に判断する必要がある。

【症例】60歳男性。腰部から肩甲骨へと移動する背部痛と左前胸部痛を訴え救急搬送された。造影CTで遠位弓部から左外腸骨動脈にかけての解離を認め、Stanford B型、DeBakey Ⅲb型の偽腔開存型急性大動脈解離と診断した。腹腔動脈と左腎動脈は偽腔より分枝、上腸間膜動脈は近位部まで解離フラップを認めた。腎機能が入院時Cre 1.51 mg/dLから徐々に悪化、第5病日には4.02 mg/dLまで上昇し尿量も大幅に減少した。呼吸状態の増悪も来しており、気管挿管を行った。また、同日の血液検査でCKが499 U/Lと上昇、腹部膨満感などの腹部症状に加えて腹部X線で腸管ガスの貯留があり麻痺性イレウスと診断、胃管挿入を行った。この時点で、外科治療や血管内治療も検討したが、胃管挿入後に撮影した造影CTでは腸管壁や腎臓に濃染不良はなく、臓器虚血の可能性は低いと考え保存治療の強化を行う方針とした。補液量を増加させCreは徐々に低下、尿量は増加した。CKは経時的に減少、腹部X線の腸管ガスは徐々に減少し第22病日に消失、腸管壁の肥厚も改善した。

【考察】本症例での急性B型大動脈解離に伴う臓器障害について、造影CTで臓器濃染不良がなく臓器虚血が原因とは断定できなかった。そのため、まずは補液や消化管減圧といった保存治療を強化したところ、腎機能障害、麻痺性イレウスは改善した。結果、外科治療、血管内治療を回避し、良好な転機を辿ることができた。急性B型大動脈解離に臓器障害を合併した場合、その原因が解離による臓器虚血であるかどうかを判断することは重要であり、本症例のように明らかな臓器虚血と診断できない症例では、保存治療を強化することで、リスクの高い外科治療や血管内治療を回避し得る可能性がある。

Resident Award

心室細動(VF)で維持中の左室補助人工心臓(LVAD)患者の心不全増悪に、新規心房細動(AF)の関与が疑われた一例

藤井恵美1)、武城千恵1)、網谷英介1)、加門辰也1)、辻正樹1)、牧尚孝1)、波多野将1)、赤澤宏1)
小室一成1)、木村光利2)、小野稔2)
1)東京大学医学部附属病院 循環器内科
2)東京大学医学部附属病院 心臓外科

35歳時に拡張型心筋症(DCM)と診断、43歳時にHeartMateⅡ(左室補助人工心臓:HMⅡ)植込術後の47歳男性。HMⅡ植込8ヶ月後より、抗不整脈薬・除細動に抵抗性のVFが持続し、PDE5阻害薬の追加・利尿薬・LVAD回転数調整で、VFのまま経過していた。46歳時にCRT-Dチェックで発作性心房細動が認められ47歳時に倦怠感・息切れの増悪と胆道系酵素の上昇を認め、心不全増悪が疑いで精査加療目的に入院となった。入院時軽度の下腿浮腫が見られ、血液検査上は、T-Bil 3.4 mg/dL、BNP 131.6 pg/mLの上昇を認め、腎機能やLDHは正常範囲内であった。CRT-Dチェックを施行したところ、入院2か月前からの持続性AFが確認され、経胸壁心エコーにおけるTrans Mitral Flowでは、sinus rhythmの際は正常のE波・A波が見られ、VF出現時にはE波は消失したものの正常A波が見られていたが、今回入院時のAF+VFにおいてはE波・A波共に消失していた。また右心カテーテルではエコー同様、a波・v波ともに消失、Outputも低下しており、回転数を増加させるとoutputは増加し、肺動脈楔入圧(PCWP)は横ばいを保てたが、右心系の圧は上昇傾向であった。以上から左心系はHMⅡで補えるが、右心系は自己の心機能であることから、AFでatrial kickが消失する影響は左心系<右心系に現れ、本症例では右心不全が主体と考えられた。回転数は維持したまま、安静・酸素・利尿薬調整で心不全加療開始したところ、体重減少に伴い、T-Bil 3.9→2.3 mg/dL、BNP 131.6→70.6 pg/mLまで低下し、AFは持続していたが心不全症状も改善した。内科的治療で改善したため、AFに対する除細動(DC)やアブレーション(ABL)は行わず、day26に退院となり、その後半年間は心不全増悪入院なく経過している。

LVAD装着後も約50%で心房性不整脈を発症し、20-50%で心室性不整脈を発症すると言われており、持続性不整脈はいずれも予後に影響を及ぼすことが知られている。本邦では移植待機日数が長いことからLVAD装着中の不整脈に遭遇する頻度が高く、またいずれも難治性であることが多いため、本症例のようにVFのまま循環動態を維持せざるを得ない症例も経験する。しかしLVAD補助下VF維持中の血行動態に関しては不明な点が多い。本症例のようにVFが持続していてすでに有効な心室収縮が消失している状況にAFが合併し、有効な心房収縮も消失し、両心系のOutputが低下した場合でも、左心系はLVADで補助できるが、右心系は自己の心機能のままであり、右心不全が増悪する可能性が考えられた。

今後、LVAD補助期間の延長、Destination Therapy症例の増加に伴い、本症例のようにVFで維持せざるを得ない症例も増加すると予想され、さらなる検討が必要と考える。


図 Swan Ganz波形の推移

Clinical Research Award

有症候性発作性房室ブロックに対するリードレスペースメーカの有効性の検討

間瀬 浩、浅野 拓、若月 大輔、倉田 征昭、鈴木 洋
(昭和大学藤が丘病院)

【背景】2017年9月より本邦でもリードレスペースメーカ(Leadless Pacemaker : LPM)が保険適応となり、以降、徐々に普及し、現在は安全性も確立されつつある。しかし、LPMはVVI(R)のみのペーシング設定に限定されるため、non-AF、特に房室ブロックに対する適応は慎重に行う必要がある。

【方法】昭和大学病院、昭和大学藤が丘病院で2014年10月から2018年11月までに施行した有症候性発作性房室ブロック23症例について後ろ向きに検討した。全例、Micra device(Medtronic)を使用し、植込みに成功した。

【結果】1例がペーシング率上昇により、セットレート変更を必要とする前失神をきたし、1例が起立性低血圧による失神をきたしたが、それ以外の症例に関しては全例植え込み前の主訴の改善を認めた。ペーシング閾値や、波高値、インピーダンス等のデータの経過に問題はなかった。約9割の症例に関してはペーシング率高値や上昇なく経過した。しかし、2例が90%以上のほぼフルペースとなったが、現在までペースメーカ症候群は呈さずに経過している。ペーシング率上昇を予見する因子は今回の検討では認めず、脚ブロックに関しても予見する因子にはなり得なかった。そのため、全症例でDDDへのアップグレードを視野に入れた上でLPMを選択する必要がある。

【結論】発作性完全房室ブロックに対してLPMは治療の第一選択肢となり得る。



Case Report Award

視力低下を契機に発見された加速型-悪性高血圧の一例

豊田真之 中山幸輝 波多野将 赤澤宏 小室一成(東京大学医学部附属病院 循環器内科)

症例は47歳女性。両側の視力低下を主訴に眼科受診し、高血圧性網膜症の診断で当科紹介受診した。受診時、220/150mmHgと著明な高血圧を呈し、軽度の腎機能障害、頭痛症状を伴っていたことから高血圧緊急症として入院加療を施行した。静注Ca拮抗薬で初期の降圧を行い、最終的にCa拮抗薬、α/β遮断薬の内服で良好な血圧コントロールを得られた。

入院時の血漿レニン活性、アルドステロン値は異常高値であったが、入院後の降圧治療により、血圧正常化に伴ってレニン・アルドステロン値の正常化を認めた。画像所見では腎動脈狭窄や腫瘍病変は認めず、上記経過からレニン産生腫瘍も否定的であった。

拡張期血圧が120mmHg以上で、網膜・腎・心臓・脳への虚血性臓器障害が急速に進行する予後不良な病態を加速型-悪性高血圧と言い、本症例も同様の病態と考えられる。

後日、MRIにて右椎骨動脈の蛇行、椎骨動脈による延髄外側の圧迫所見を認めた。吻側延髄腹外側野(RVLM)は交感神経活性の調節中枢として知られ、RVLMの血管性圧迫と高血圧の関連がこれまで報告されている。当院で、比較的突然発症の高レニン高アルドステロン性高血圧患者でMRIを評価した所、4症例で延髄の血管性圧迫を認めた。いずれもβ遮断薬を中心とした降圧薬で、良好な降圧、レニン・アルドステロン値の正常化が得られている。

高血圧を来す機序として、RVLMの血管性圧迫を契機として、交感神経の賦活化、レニン・アンジオテンシン系の亢進を来すことが考えられた。アンギオテンシンII自体が、延髄の循環中枢でROS産生、炎症を惹起し、血圧調整のセットポイントに異常を来すことが言われており、血圧上昇とレニン・アンジオテンシン系亢進の悪循環を助長していたものと考えられた。本症例ではα/β遮断薬を中心とした薬物治療によりこれらの悪循環を断つことができたものと考えられた。

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