情報・広報・啓発委員会より

第258回関東甲信越地方会 受賞演題一覧(2020年12月12日~14日開催)

受賞演題一覧

第258回関東甲信越地方会 最優秀賞受賞演題(2020年12月12日~14日開催)

Student Award

ヒト房室弁輪の心房―心室筋の近接性と副伝導路形成の可能性に関する検討

加藤 祐樹1, 2)、松山 高明2)、曽根 浩元2)、矢持 淑子3)
1)昭和大学 医学部 第5学年
2)昭和大学 医学部 法医学講座
3)昭和大学 医学部 臨床病理診断科

【背景】心臓の房室弁輪では刺激伝導系以外の心筋により心房筋―心室筋の連続性を有するとWPW症候群などの副伝導路症候群となることが知られており、その中には12誘導心電図で診断できない症例もある。副伝導路の形態学的検討は過去にも散見されるが、生前に副伝導路症候群を指摘されていない心臓に潜在的にその形態学的背景が存在しているかは明らかでない。

【目的】生前に副伝導路を指摘されていない心臓の房室弁輪に副伝導路に関連する形態学的特徴が存在しないか検討すること。

【対象・方法】正常大の剖検心19例(平均年齢58.9±16.2歳、女性7例、平均心重量313±52g)。ホルマリン固定後に房室弁輪を展開して両房室接合部全周を4mm毎に切出して包埋後、7μmで薄切してマッソン三重染色を施行し、弁輪全体を観察した。

【結果】房室弁付着部の心房心室筋距離の平均値は三尖弁輪で0.69±0.56mm、僧帽弁輪で1.08±0.78mmで、三尖弁付着部では僧帽弁付着部より線維輪構造が菲薄であった(P=0.000014)。三尖弁輪では前側壁方向で、僧帽弁輪では側壁方向で心房心室筋の近接性を認めた。年齢と心房心室筋間距離の関係では三尖弁輪で年齢が高いほど心筋の距離は開大する傾向にあった(図1)。また、三尖弁付着部の肉柱は僧帽弁側より太く、疎な分布を示し、心室基部の弁尖付着部までみられた。ここでは心室筋は心房側にせり上がり、心房・心室筋の近接性が左室より目立った(図2)。弁尖内に心房筋が含まれる像を右側に12例、左に5例認め、一部心房・心室筋が近接していた。特殊心筋の遺残と思われる細胞集塊を全例三尖弁輪の前側壁方向に認めた。

【結語】房室弁付着部の構造は多様性があり、副伝導路の心筋束はその構造により生じやすくなる可能性も考えられる。

図1:右側房室接合部の加齢による心房筋―心室筋間距離の開大(A: 34歳、B: 83歳、RA. 右房、RV. 右室、TV. 三尖弁、マッソン・トリクローム染色)

図2:左右房室弁輪下心内膜面の違い(LA. 左房、LV. 左室、MV. 僧帽弁、RA. 右房、RV. 右室、TB. 肉柱、TV. 三尖弁、マッソン・トリクローム染色)

Resident Award

リンパ形質細胞性リンパ腫に合併した肺高血圧症に全身化学療法が奏効した1例

馬場悠輔1)、小宮山知夏1)、山口徹雄1)、山本久史2)、児玉隆秀1)
1)国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター内科
2)国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科

【症例】
X-14年にリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)と診断後、未治療で経過観察されていた59歳男性。X年3月LPL増悪を背景に下腿浮腫、労作時呼吸困難を自覚した。安静時心エコー図検査で心室中隔の拡張期扁平化と中等度三尖弁逆流(TRPG 37.7mmHg)を認め、肺高血圧症が疑われた。造影CTでは明らかな塞栓所見はなかったが、肺換気血流シンチグラフィではミスマッチを認め慢性血栓塞栓性肺高血圧症が想定された。右心カテーテル検査では肺動脈楔入圧・心拍出量は正常範囲であったにも拘らず平均肺動脈圧(mPAP)は23mmHgであり境界型肺高血圧症の診断に至ったが、低血圧と貧血のため肺血管拡張薬や抗凝固薬は導入せず、画像所見から侵襲的治療も適応外と判断した。一方で、血液検査ではLPLに伴う高IgM血症(血清IgM 5165 mg/dL)、赤血球の連銭形成を認めた他、眼底所見上も血管の蛇行、軽度の出血がみられ、過粘稠度症候群の合併が示唆された。
LPLに対するBR(Bendamustine + Rituximab)療法導入直後、血清IgM低下と並行して安静時心エコー図でのTRPGは速やかに正常化した一方、同時期に施行した運動負荷心エコー図検査では運動誘発性肺高血圧症、運動耐容能低下が確認された。しかしながら、BR療法3コース施行後には右心カテーテル検査でmPAPは17mmHgまで低下し、運動負荷心エコー図でも推定肺動脈圧、運動耐容能の改善を認めた他、BR療法4コース施行後の肺換気血流シンチグラフィも正常所見を呈した。

【考察】
本例はLPLによる二次性肺高血圧症を発症し、全身化学療法(BR療法)によりLPLとともに肺高血圧症も軽快した1例と考えられる。その機序として過粘稠度症候群の介在が想定され、他の疾患でも過粘稠度症候群が肺高血圧症をきたす報告が散見される。LPLは心不全を合併しやすいことで知られるが、いずれもうっ血性心不全、高拍出性心不全として報告されており、肺高血圧症合併に関する詳細な報告はない。LPLを始めとした悪性腫瘍に伴う肺高血圧症は極めて稀であるか、これまで見逃されてきた可能性があり、今後念頭におくべき病態といえる。また、潜在的な悪性腫瘍合併肺高血圧症の検出および治療効果判定には運動負荷心エコー図検査が有用である。

Clinical Research Award

入院回数が急性心不全症例の予後に与える影響について検討

四元 春輝1)、金子 英弘1), 2)、伊東 秀崇1)、桐山 皓行1)、加門 辰也1)、藤生 克仁1), 2)、森田 光治良3)
道端 伸明4)、城 大祐4)、森田 啓行1)、康永 秀生3)、小室 一成1)
1)東京大学医学部循環器内科
2)東京大学医学部先進循環器病学講座
3)東京大学医学部臨床疫学・経済学教室
4)東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座

目的:わが国の入院心不全症例を対象に、入院回数が予後に与える影響を検討する。

方法及び結果:DPC databaseに2010年1月から2018年3月までに登録された447,818件の入院心不全(年齢中央値81歳、男性238,192例)を、合計の入院回数に基づいて1,2,3,4,≥5回に分類した。入院回数が増える毎に入院間隔は短縮し、在院日数は延長、院内死亡率も上昇した。院内死亡を従属変数とし、多変量ロジスティック回帰分析およびgeneralized estimation equationを行った結果、入院回数は院内死亡率上昇の独立した規定因子であることが示された。

結論:本邦の心不全診療において、入院回数が院内予後の規定因子であることが示唆された。心不全パンデミックの到来が迫るわが国において心不全症例の再入院を予防する取り組みの重要性を示す結果と考える。

心不全による入院回数が院内死亡率に与える影響
入院回数オッズ比95%信頼区間P値
1回Reference
2回1.571.50-1.64< 0.001
3回2.011.89-2.14< 0.001
4回2.492.28-2.72< 0.001
5回以上2.832.59-3.08< 0.001
補正因子:年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、慢性肝臓病、慢性呼吸器疾患、貧血、骨粗鬆症、心筋梗塞、拡張型心筋症、NYHA class、入院年、2日以内のβ遮断薬、RAS阻害薬、MRアンタゴニスト、トルバプタン内服、2日以内の点滴強心薬、硝酸薬、フロセミド使用

Case Report Award

冠攣縮による一過性重度僧帽弁逆流を、アセチルコリン負荷試験と心エコーを組み合わせ診断した一例

服部 修1)、梶野 了誉2)、佐々木 賢二2)、丹羽 直哉2)、田中 宏明2)、徳田 華子2)、鶴見 昌史2)
矢嶋 紀幸2)、小野 智彦2)、松村 圭祐2)、鈴木 雅裕2)、岩永 史郎3)
1)慶應義塾大学病院 循環器内科
2)国立病院機構 埼玉病院 循環器内科
3)埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科

症例は呼吸困難を主訴とする89歳の女性。最近、半年間に肺炎、発作性心房細動と心不全で2回入院した既往がある。入院精査で中等度MRを指摘されている。外来で利尿薬とβ遮断薬による治療を受けていたが、夜間起座呼吸となり救急搬送された。頻呼吸、butterfly shadow、意識レベル低下があり、急性肺水腫、心原性ショックと診断した。心電図でST低下と左脚前枝ブロックを認めた。MRがmassiveとなり、著明な左房拡大も認めた。NPPVを再装着すると速やかに改善し、1時間後の心エコー図でMRは中等度となった。冠攣縮による乳頭筋不全を疑い、心不全改善後にアセチルコリン負荷試験を施行した。右冠動脈に完全閉塞をきたし、同時にMRの増大を認めた。β遮断薬を中止して、ジルチアゼムと硝酸薬を開始した以降に再燃はない。後日に施行した経食道心エコー図検査ではMRは軽度で、後尖に可動性低下がありリウマチ性変化の合併が疑われた。
冠攣縮は乳頭筋不全を引き起こすという報告があり、本症例は僧帽弁のリウマチ性変化を素地とし、冠攣縮による乳頭筋不全でMRが増大したと考えられる。また本症例と同様の特徴を示す一過性の重度MRに、Eclipsed MRという概念がある。Eclipsed MRは予後不良で外科手術に至る報告が多いが、Eclipsed MRの中にも本症例のような病態が含まれ、薬物療法が奏功する可能性がある。

 

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