プレナリーセッション
〈日本語〉

東日本大震災復興 5周年
─我々は何を学び,今後,何をなすべきか?─
The Great East Japan Earthquake:
What We Learned in the Past 5 Years and Future Perspectives

国内座長: 下川 宏明(東北大学 循環器内科学)
竹石 恭知(福島県立医科大学 循環器・血液内科学)
2011年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく5年が経過する.海溝型地震に伴う大津波により東日本の沿岸地域に未曽有の被害をもたらしただけでなく,原発事故による放射能汚染が重なり,これまで人類が経験したことのない複合型の災害であった.地震と循環器疾患との関連性についてはロサンゼルスのノースリッジ地震や阪神淡路大震災をはじめ,様々な地震の後に循環器疾患が増加することが報告された.東日本大震災でも心臓突然死,急性心筋梗塞,心不全,脳卒中といった心血管疾患が一過性に増加し,徐々に収束したことが報告されている.一方,長期にわたる避難生活によるストレスや生活環境,生活習慣の変化が生活習慣病を悪化させることも明らかになっており,今後の心血管病の発症の増加と悪化に及ぼす影響が危惧される.また,東日本大震災の被災地は高齢化率が高く,疾病構造の変化に対応した包括的な医療体制の再構築は,少子高齢化が進む我が国の将来の医療を考える上でも重要である.今後,広範な地域にわたる海溝型地震,大都市直下型地震が発生する可能性が指摘されている.本セッションでは過去の災害や東日本大震災で得られた知見を総括し,今後の起こり得る大災害に備えて適切な疾患の予防対策を提言したい.