シンポジウム
〈日本語〉

Polyvascular Diseaseとしての動脈硬化の診断と治療の進歩
Recent Progress in Diagnosis and Treatment of Atherosclerosis as a Polyvascular Disease

国内座長: 平田 健一(神戸大学 循環器内科学)
佐田 政隆(徳島大学 循環器内科学)
アテローム血栓症は世界の死因の首位を占め,我が国においても,食生活の欧米化,運動不足,高齢化の進行とともに今後増加すると思われる.アテローム血栓症は,従来,冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD),末梢動脈疾患(PAD)などとそれぞれの臓器障害と関連して捉えられてきたが,近年,動脈硬化は全身の血管に進行することがわかり,Polyvascular Diseaseという概念が導入された.REACHレジストリーによると,CAD群の 10.6%にPAD,逆に PAD群の 51.6%に CADを合併しており,複数の血管床にアテローム血栓症を有する Polyvascular Diseaseは,将来の虚血イベント発症の最も有力な予測因子であった.すなわち,動脈硬化性疾患患者の予後を改善するためには,PCIなどの局所の治療に加えて,Polyvascular Diseaseとしての全身の動脈硬化症の管理が重要になってくる.また,急性冠症候群の診療においても,Polyvascular Diseaseの概念は重要である.急性冠症候群は,軽度の内腔狭窄しかきたさない動脈硬化プラークの破綻により,突然血栓性閉塞をきたして生じることが多い.不安定プラークの存在を検出しようと様々な試みが行われているが,現在のところ,急性冠症候群の予知は困難である.そのため,各種血管機能検査を駆使して,無症候性の Polyvascular Diseaseを診断して,早期に介入することが急性冠症候群の予防に重要と思われる.本シンポジウムにおいては,Polyvascular Diseaseとしての動脈硬化の診断と治療に関して各施設の画期的な取り組みを紹介いただき,心血管事故回避に向けて,PolyvascularDisease診療の今後の方向性を討論したい.