シンポジウム
〈英語〉

疾患iPS細胞から創薬へ
Development of Novel Drugs from Patient-Derived iPS Cells

国内座長: 小室 一成(東京大学 循環器内科学)
iPS細胞は,基礎研究から臨床まで大変広い分野で注目されている.特に臨床では,iPS細胞を種々の細胞へ分化させ,それを患者に移植するといった,一種の再生治療としての役割が大いに期待されている.実際 2014年,世界で初めて我が国で,加齢黄斑変性の患者に本人の iPS細胞から分化させた網膜細胞が移植された.今後も様々な疾患患者に対する移植が予定されているが,それと並んで臨床応用に期待されているのが,疾患患者の iPS細胞を用いた病態解析と創薬である.心筋細胞を例に話す.今まで患者の生きた心筋細胞を用いた研究はほとんど不可能であった.収縮,弛緩といった動的機能が重要な心筋細胞において,生きた細胞の解析ができないということは致命的であり,細胞レベル,分子レベルでの解析なくして,病態を詳細に理解することはできなかった.心筋症や QT延長症候群といった遺伝性心疾患患者の iPS細胞から分化させた心筋細胞においては,患者の心筋細胞と同じ遺伝子の異常が存在するはずであり,その細胞の機能解析により,患者心臓の病態を理解できる可能性がある.また大量に存在する患者の心筋細胞を用いて,創薬スクリーニングもできよう.iPS細胞から分化させた心筋細胞は,遺伝子発現レベルも低く,一般的に未熟であり,また体内の心筋細胞とは異なる多くの遺伝子が発現しているといった課題は残っているものの,ヒトの生きた心筋細胞を研究に使えるようになった意義は大きい.国内外で盛んに行われている疾患 iPS細胞を用いた病態解析,創薬の現状と課題について討論する.