シンポジウム
〈英語〉

成人先天性心疾患における画像診断の進歩
Advances in Image Diagnosis for Adult Congenital Heart Diseases

国内座長: 石井 正浩(北里大学 小児科)
内科的管理の進歩,手術成績の向上により多くの先天性心臓病の患児が成人に達している.これらの成人先天性心疾患の患者は,継続的な経過観察,加療が必要である.我が国では,現在成人先天性心疾患の患者は50万人近くになると推定される.これは,年間の心筋梗塞の患者数を上回る.このため,成人先天性心疾患は,すでに循環器内科の一分野と考えられる.小児循環器科から紹介される症例は診断がついているが,経過観察が中断した症例などが急患で訪れた場合は,構造の把握が必要となる.成人先天性心疾患患者の中には病名を本人に告知されていない患者も存在する.先天性心疾患の解剖学的診断は,心エコー図を用いて大血管,心室ループ,内臓心房位を診断し主要心区分法を用いる事が多いが,これは解剖学の概念であり用語が難しく循環器内科医にとっては理解することが難しい.そこで,診手術例では内臓心房位,大血管位置,心室の診断,心房心室関係,心室大血管関係に着目して診断すると比較的容易に診断ができる.術後症例では,二心室か機能的単心室か,体心室は右心室か左心室か,大血管は大動脈か肺動脈かということに着目すれば診断ができる.心内構造が把握できれば次に機能の把握へ進む.体心室機能,流出路の評価(狭窄や閉鎖不全),肺高血圧の有無を診断する.しかし,乳幼児期より複数回の心臓手術を施行している成人先天性心疾患患者では通常の経胸壁心エコー図では描出不良の症例も多い.この様な症例では,経食道心エコー図法,CT,MRI,SPECT,血管造影など複数のモダリティを組み合わせて正確な画像診断を行う事が必要である.マルチモダリティを用いる事で成人先天性心疾患患者の構造,機能が正確に診断でき治療戦略を組み立てていくことが可能となる.本シンポジウムにおいては,各診断モダリティの専門家に成人先天性心疾患への取り組みを披露してもらい議論を交わしたい.