シンポジウム
〈日本語〉

大動脈瘤治療の可能性を探る
Exploration of a Possibility of Better Strategy for Treating Aortic Pathologies

国内座長: 志水 秀行(慶應義塾大学 心臓血管外科)
古森 公浩(名古屋大学 血管外科)
大動脈瘤は放置すれば最終的に破裂に至る予後不良な疾患である.つい最近まで人工血管置換術が唯一の治療法とされてきたが,ステントグラフト治療の登場により,従来手術では過大侵襲のために治療困難と判断されたハイリスク症例に対しても治療の道が拓かれ,大動脈疾患に対する治療が大きく前進した.従来手術とステントグラフトという 2つの治療はいずれか一方のみが優れているのではなく,それぞれが利点と欠点を有している.両者とも,手技の工夫,より確実な臓器保護法の確立,デバイスの改善など確実性や安全性の向上を目指した取り組みが行われ,いずれも短期・長期の治療成績の向上が達成されている.また,これら 2つを組み合わせたハイブリッド治療など,新術式の開発も盛んに行われている.このように,大動脈疾患に対する治療体系は,現在なお変化しつつあるのが現状である.一方,基礎研究の領域においても,大動脈瘤や大動脈解離の病態の解明,バイオマーカーの探索,新たな予防法の開発など興味深い研究が数多く行われており,今後,これらの中から有用な知見が得られ,大動脈疾患の治療を発展させていくことが大いに期待される.本セッションでは,大動脈疾患に対する治療の現状や最先端の治療法に関する発表とともに,今後の成果が期待される基礎的研究の発表を加え,大動脈疾患に関する基礎・臨床の垣根を越えた幅広いトピックの情報を共有することで,将来に向けた大動脈瘤治療の可能性を探っていきたい.