第80回日本循環器学会学術集会

速報

シンポジウム5
CTEPH 診療の最前線
2016年3月18日(金) 11:10〜12:40 第12会場(仙台国際センター展示棟 1階 展示室1)
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座長:
 伊藤 正明 (三重大学 循環器・腎臓内科学)
 佐藤 徹 (杏林大学 循環器内科)
演者:
 矢尾板 信裕(東北大学 循環器内科学)
 大郷 恵子(国立循環器病研究センター 臨床検査部 臨床病理科)
 池田 長生(国立国際医療研究センター 循環器内科)
 中西 直彦(京都府立医科大学 循環器内科学)
 細川 和也(九州大学 循環器内科学)
 石田 敬一(千葉大学 心臓血管外科)

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療は,従来は第一選択は肺血栓内膜摘除術(PEA)であったが,肺血管拡張薬と肺動脈形成術(BPA)の出現で大きく変わった。
シンポジウム「CTEPH診療の最前線」で、三重大学の伊藤正明氏と杏林大学の佐藤徹氏の座長のもと、東北大学循環器内科の矢尾板信裕氏、国立循環器病研究センター臨床検査部臨床病理科の大郷恵子氏、国立国際医療研究センター循環器内科の池田長生氏、京都府立医科大学循環器内科学の中西直彦氏、九州大学循環器内科学の細川和也氏、千葉大学心臓血管外科の石田敬一氏が、最新のCTEPHの診断、治療方法について報告した。

・1)CTEPH患者の血漿においてThrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)が高値である。

矢尾板氏は、CTEPHの病態に線溶能の低下と血小板の活性化が関与しており、その原因蛋白質として線溶能を阻害するTAFIが関与していることを報告した。TAFIが今後の新たな治療標的となる可能性が示唆された。(スライド1)

・2)肺動脈病変の形態を理解することが、CTEPHの治療において重要である。

大郷氏がCTEPH患者の肺動脈の病理組織的考察に基づき、器質化血栓閉塞は、区域、亜区域枝レベルの分岐部で多く、特徴的なcolander-like resionを伴っていると報告した。

・3)OFDIは再現性が高く、BPAの治療方針の決定をサポートする。

池田氏は、CTEPH患者に対するBPA施行時のOFDIの有用性について報告した。OFDIはLumen areaとVessel areaに高い相関がみられ、IVUSよりも再現性が高いことから、OFDIはBPAの治療戦略をサポートし、有用なツールになると考えられた。(スライド2)

・4)血管内視鏡による評価は、血管造影では得られない病変の評価が可能であり、器質化血栓による様々な形態が明らかとなった。

中西氏は、血管内視鏡を用いてCTEPH患者の肺動脈病変について、新たに判明した器質化血栓の形態を報告した。血管内視鏡を用いて、血管造影で認められるweb病変は白色血栓によるnet 状の形態であり、多くの血管がBPAの治療標的部よりも遠位部にも血栓病変を伴っていることを明らかにした。 (スライド3)

・5)BPAにより拡張した病変以外の肺血管抵抗も改善する。

細川氏は、BPAの際に非BPA側の肺血管抵抗を測定し、非BPA側の肺血管抵抗が改善することを報告した。機序としてはBPAに伴う非BPA側のShear Stressの改善を考察した。(スライド4)

・6)肺動脈内膜切除術は末梢型CTEPH患者に適応し得る。

石田氏は、末梢型CTEPHに対する外科的適応について報告した。2011年以降に行われた末梢型CTEPHに対する肺動脈内膜切除術の成績はそれ以前の症例よりも同様の良好な結果であった。このことから末梢病変に対しても血栓内膜切除術の適応となる可能性が考えられた。

文責:佐藤、矢尾板(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学)

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