座長:
安田 聡 (国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門)
高橋 潤 (東北大学 循環器内科学)
演者:
石井 正将(熊本大学 循環器病態学)
圓谷 隆治(東北大学 循環器内科学)
高野 仁司(日本医科大学 循環器内科)
嵐 弘之(東京女子医科大学 循環器内科)
大西 隆行(平塚共済病院 循環器科)
野口 暉夫(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
近年胸痛精査目的に診断的冠動脈造影を受けた患者の約20-30%が正常冠動脈を示すことが明らかになり、今後冠攣縮を含む冠血管運動異常やSyndromeXや冠微小血管狭心症、slow flow現象や微小血管攣縮などの微小血管障害に焦点を当てた病因の評価が必要とされています。20日午前、東北大学百周年記念会館にて国立循環器研究センターの安田先生、東北大学循環器内科の高橋先生を座長としシンポジウム20 「冠動脈疾患における冠動脈機能異常の重要性」が行われました。
1. 有意狭窄病変に一致した冠攣縮は将来の心血管イベントの高リスク因子である。
熊本大学の石井先生はアセチルコリン負荷試験で誘発された冠攣縮のうち有意狭窄と一致した冠攣縮と硝酸剤使用が将来のMACEに対する予測因子であり、狭窄を有する冠攣縮の臨床的特徴は他と異なっていることを報告されました。
2. 長時間作用型ニフェジピンは抗炎症作用によりステント留置後の血管運動異常を抑制する。
東北大学の圜谷先生はNOVEL studyから待機的PCIにてエベロリムス溶出性ステント留置後の患者群において長時間作用型Ca拮抗薬であるニフェジピンが抗炎症効果により血管運動異常を抑制することを報告されました。
3. 18F-FDG PETは冠動脈ステント留置後の炎症反応の評価に有用である。
日本医科大学の高野先生は炎症反応が冠動脈ステント留置後の患者における遅発性ステント血栓症状やステント不完全圧着、ステント内再狭窄の発症に関与しており、冠動脈ステント留置後の炎症反応の評価に18F-FDG PETが有用であることを報告されました。
4. iFR(Instantaneous Wave-Free Ratio)は左室拡張能障害と負の相関を示し、冠微小循環障害を反映している可能性がある。
東京女子医科大学の嵐先生はiFRが左室拡張障害群において著明に低下しており、iFRはE/e’と負の相関を示すことを報告され、この研究の結果からiFRが冠微小循環障害を反映している可能性を示唆されました。
5. 急性心筋梗塞患者においてPrimary PCI直後のIMR(Index of
Microcirculatory)は梗塞サイズを予測する。
平塚共済病院の大西先生は急性心筋梗塞症例においてprimary PCI直後の
IMR高値群は低値群と比較し、梗塞サイズが大きく入院中の心不全発症率
が高いという報告をされ、予後予測因子である可能性についても発表され
ました。
6. 急性心筋梗塞治療後の心臓MRIにおいてMVO(microvascular obstruction)は予後予測因子となる。
国立循環器研究センターの野口先生は急性心筋梗塞治療後のperfusion MRIにてMVOが大きい群ではMACEが多く予後不良因子であったことを報告され、左室リモデリングの指標の一つであることを示されました。
以上6名の演者の先生の報告により冠動脈の血管機能の評価や冠微小循環障害の重要性が改めて認識されました。
文責:崔、須田(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学)