第80回日本循環器学会学術集会

速報

トピック7
冠動脈外膜
2016年 3月20日(日) 13:50~15:20 第18会場(東北大学百周年記念会館 2階 川内萩ホール)
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座長:
 佐田 政隆(徳島大学 循環器内科学)
 田中 篤(和歌山県立医科大学 循環器内科)
演者:
 田中 君枝(東京大学 保健・健康推進本部)
 鶴田 敏博(宮崎大学 循環体液制御学分野)
 川辺 淳一(旭川医科大学 心血管再生先端医療開発講座)
 樽谷 玲(和歌山県立医科大学 循環器内科)
 西宮 健介(東北大学 循環器内科学)

3月20日(日)トピック「冠動脈外膜」において、血管外膜に関する多彩な研究の結果が披露されました(写真1)。血管外膜には、血管栄養血管であるVasa vasorumや炎症細胞、線維芽細胞、それらを包含する血管周囲脂肪 (PVAT) が存在します。近年、動脈硬化の成因や虚血性心疾患患者の病態における血管外膜の役割について、世界的に大きく注目が集まっております。

・PVATにおけるVasa vasorumの発達
田中君枝先生(東京大学)はマウス動脈硬化巣におけるVasa vasorumの役割や組織染色方法について一連の研究成果を披露し、最近の研究成果として、マウス頸動脈部分結紮モデルにおいて、GFP陽性脂肪組織を血管周囲に移植すると、傷害血管のPVATにGFP陽性のVasa vasorumが確認できることを報告しました。

・高血圧性心肥大における冠動脈周囲線維化に対する新規治療法
鶴田敏博先生(宮崎大学)は血管外膜の線維芽細胞に着目し、cAMP刺激因子(adrenomedullin) および可溶性guanylate cyclase刺激因子(BAY41-2272)が、ラット高血圧性心肥大ラットモデルにおいて、血圧とは独立した冠動脈外膜周囲の線維化抑制効果を示すことを報告しました(スライド1)。

・Vasa vasorumの成熟化におけるNinj1とCapSCsの役割
川辺淳一先生 (旭川医科大学)は、Ninj1が虚血組織において、周細胞の生着に必須であること、マウス大腿動脈損傷後Vasa vasorumを形成する多能性周細胞(CapSCs)を単離することに成功し、同様に虚血部位の血管成熟化に関わることを示しました(スライド2)。

・Vasa vasorumの臨床意義
樽谷玲先生(和歌山医科大学)は、OCTを用いてヒト冠動脈硬化巣のVasa vasorumの役割を明らかにし、動脈硬化の初期病態に、外膜側由来のVasa vasorumが関与し、進展したプラークにおいてむしろ内膜面を走行するVasa vasorumが寄与することを報告しました(スライド3)。西宮健介先生(東北大学)は、OFDIを用いた検討により、冠攣縮性狭心症患者において、Vasa vasorumが増生していることを報告し、冠攣縮においてもVasa vasorumが新しい治療標的となる可能性を示しました(スライド4)。

総合討論では、動脈硬化や冠攣縮の病態は従来の内膜側からの病態関与のみでは決して説明できないことが強調され、外膜の病態に注目した今後の研究展望について、活発に議論がなされました(写真2)。

文責:宇塚、西宮(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学)

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