社会の高齢化とともに、心疾患の罹患患者数および死亡者数は増加の一途をたどっている。心疾患患者の多くは経過の中で急性増悪による入退院を経験し、その都度、身体機能や認知機能が大きく低下する。患者の身体機能や認知機能などを無視して、生命を維持するための医療を盲目的に進めることは、必ずしも患者の希望に沿うものではないことは広く認識されている。ただし各患者により人生の価値観は様々であり、どの段階で治療の方向性を変換するかについて医療従事者のみで画一的に決定せず、患者の意思を確認しながら判断すべきである。ところが、病状が進行すると本人に意思確認ができない。家族であれば本人の意思を踏まえた意思決定が可能かというと、必ずしもそうではない。最近は身寄りのない独居老人が増えている。したがって、患者の状態がある程度安定している時期に、患者および必要に応じて家族も交え、患者の思いを確認し、個別の治療の選択を含め全体的な目標を明確にする取り組みとしてAdvance Care Planning(ACP)が注目されている。しかし、少なくとも我が国の循環器領域では十分にACPが実践されていないのが現状である。本シンポジウムではACPを進めるための取り組みについて論じていただく。
シンポジウム3
チームで取り組む循環器医療におけるAdvance Care Planning
座長: | 山本 一博 | (鳥取大学 循環器内科学) |
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