武田 泰生 先生(鹿児島大学附属病院薬剤部長・教授)
分子標的治療薬の登場で薬物治療は大きく変わろうとしている。個別化医療が叫ばれる中、疾患の原因に基づく治療薬の開発は、これまで不治の病と考えられてきた多くの病気に希望を与える医薬品として登場した。しかし、効き目が鋭い半面、副作用もシャープに現れる分子標的薬が多く登場している。特に、近年開発されている抗がん薬は、これまでとは異なる副作用が発現したり、その薬が合わない患者には致命的な有害作用も発現している。
このような中、2015年以降に開発された新規医薬品については、当該製薬企業に対し、製造販売後におけるリスク管理計画を策定することを義務化した。一方、医療現場においても医療関係者は副作用のモニタリングを積極的に行うとともに、当該医薬品との因果関係に関わらず、PMDAを通じて厚生労働省に報告する義務が強化された。
薬物治療に限ったことではないが、入院中の患者の異変に最初に気付くのは看護師である場合が多い。医療がより高度化・複雑化する中、医師の負担軽減を目的として、厚生労働省は看護師が行うことができる特定行為(38行為)を策定し、2015年にその研修制度を構築した。策定された特定行為の中には、輸液の流量調節、抗菌薬投与、インスリン量の調節、持続点滴中の各種薬剤の投与量調節など、医薬品の適性使用に関する多くの行為が含まれている。一方、病院薬剤師もまた病棟配置が進み、効能効果や副作用のモニタリングを行い、処方提案を進めることで医師の負担軽減と薬物治療の適正化に貢献している。
本講演では、実際の臨床現場で起こりがちな医薬品関連のインシデントやアクシデントのいくつかの事例を通して、薬物治療に必要な薬理学の基礎的知識の活用、さらに適切な薬物療法への薬剤師-看護師の協働、看護師へ期待したいポイントなどについて概説する。
特に、以下の内容について事例紹介をしながら概説する。
1.薬の体内動態における薬物動態学的相互作用について
2.薬-食品相互作用を見抜く
3.後発医薬品とバイオシミラーについて など