

このたび、第52回日本床細胞学会総会(春期大会)を2011年(平成23年)5月20日(金)-22日(日)の3日間、福岡市・福岡国際会議場で開催させていただくことになりました。長い伝統と実績を誇る本学会をお世話させていただきますことを非常に光栄に思いますと同時に、その責任の重さを痛感しております。
本邦における「細胞診断学」は、約60年前、一部の熱心な医師グループによって始められ、様々な障害を乗り越えながら、ここまで、地道に発展してまいりました。この間の先人の労苦は言葉に尽くせないものがあったと思われます。こうした先人が築いてくれた強固な土台の上に、今後何を積み上げていかなければならないかを、今我々は問われています。
これまで、細胞診断学といえば、ほとんどが経験学というべきものでした。クロマチンパターン、核形不整、核腫大、核膜肥厚、N/C比、核の重積、核小体の出現等々、「こういう所見があれば、こうだ。」といったパターン認識による診断がなされてきました。従って、経験がものを言う名人芸が存在する世界でもありました。一方では、診断基準に個人差が出る可能性があり、常に精度管理が必要となる要因を孕んでいます。こうした状況を踏まえ、今後の細胞診断学のあるべき姿としては、できるかぎり論理的に診断を進めることができること、すなわち誰にでも同様の診断ができるようになることが望まれます。そのためには、診断学そのものが、できる限りエビデンスに裏打ちされた科学体系の中で行えるようになることだと考えます。
本学術集会のテーマは「細胞診断を科学する」とさせていただきました。これまでも、これに類似するテーマが掲げられてまいりました。その意図するところは同じであると考えています。今回、細胞診断の科学性を追求するという中で、重要なテーマの一つである「核クロマチンの意義」をとりあげさせていただきます。「細胞診断における核クロマチンの考え方」というテーマで主題講演を組ませていただきました。また、「細胞診における核クロマチンの意義」というテーマで主題シンポジウムを企画させていただきました。この中で、核クロマチンの変化を各領域でどのように捉えているかを討議していただく予定です。また、細胞診の現場でしばしば陥る「ピットフォール」をテーマとしたワークショップを企画する予定でおります。各領域で、その原因と対策について討議いただきたいと考えています。このコーナーは一般公募とする予定ですので、多数の応募を期待しております。
特別講演としましては、ロマンのある、楽しい講演を聴いていただきたいと考えまして、独立行政法人 国立科学博物館 人類研究部の篠田謙一先生にお願いいたしました。「DNAに刻まれた日本人の歴史」というテーマでお話しいただく予定です。ミトコンドリアDNAの分析によってその人のルーツが類推できるというユニークな研究をなさっておられます。さらに、特別講演として慶応義塾大学医学部先端医科研究所の佐谷秀行先生に「がん幹細胞」をテーマとした講演をお願いする予定です。今後のがん治療の考え方に新しい情報を提供いただけるものと期待しています。また、テーマは未定ですが、長村義之理事長の推薦で、2013年パリ市で開催予定の国際細胞学会会長でありますパリ大学のPhilippe Vielh教授に招聘講演をお願いする予定です。その他、提案をいただいた会員の意見を参考にして、シンポジウム5題、ワークショップ5題、要望講演および教育講演を10数題用意致しております。
5月の九州は非常に爽やかな季節でございます。学会の合間に、福岡市内はもとより、太宰府、吉野ヶ里、佐賀、有田といった近郊を散策されるのも一興かと考えます。多数の会員のご参加をお待ち申し上げます。
第52回日本臨床細胞学会総会(春期大会)
会長 岩坂 剛
(佐賀大学医学部産科婦人科学講座教授)