代表世話人挨拶

SNNS研究会代表世話人 竹内 裕也
浜松医科大学医学部外科学第二講座(消化器・血管外科学分野)


 

 この度、代表世話人を拝命いたしました浜松医科大学 竹内裕也と申します。このような大役を任され、大変光栄に存じますとともに身の引き締まる思いであります。まずはこれまでにひとかたならぬご指導とご厚情を賜りました名誉代表世話人 故北島政樹先生、愛甲 孝先生、前代表世話人 井本滋先生をはじめ、すべての会員の皆様に心より御礼申し上げます。
 1999年11月に北島先生が第1回SNNS研究会学術集会を主宰されてからこの二十数年の間にSNNSは大きく発展を遂げました。国内外のfeasibility studyを経て、2010年から悪性黒色腫、乳癌において保険診療としてセンチネルリンパ節生検による縮小手術が可能となり、今や実地臨床では不可欠の手技となっております。また消化器癌、頭頚部癌、婦人科癌などの領域においても、センチネルリンパ節理論を応用した個別化縮小治療の新知見が本研究会から次々と報告され、実用化が目前となっております。
 わが国における固形癌に対するSNNSがここまで大きく発展できたのは、黎明期における諸先輩方の叡智と不断の努力に加えて、本研究会会員の先生方の一つ一つの基礎研究、臨床研究の積み重ねによると考えます。従来の定型化された手術や治療法とは異なり、SNNSによる個別化縮小治療は医療者にとっては決して簡単なものではありません。SNNSは、根治性だけでなく患者さんのQOL向上を目指す熱い志を持ったチームが作り上げるprecision surgeryと考えます。
 私はかつて幸運にもJohn Wayne Cancer Instituteに留学し、センチネルリンパ節理論を世界で初めて臨床的に実証したDr. MortonやDr. Giulianoに師事する機会をいただきました。時代の異端児かつ先導者であったDr. Mortonの思いを次の世代に伝え、本研究会のこれまでの数々の業績をさらに発展させて未来につなぐことが私の使命だと感じております。
 最近では、免疫チェックポイント阻害剤による革新的な免疫療法がトピックになっていますが、センチネルリンパ節は腫瘍細胞と宿主の免疫担当細胞が初めて対峙する場として、またリンパ節微小転移成立の成否を決めるせめぎ合いの場としても大変注目されています。これまで以上に、センチネルリンパ節に関わる臨床医と研究者の皆様が診療科や領域の垣根を越えて議論を深め、情報交換し合えるような学術集会を目指してまいります。次の臨床研究、基礎研究のseeds(種)を探し、患者さんのために大きく育てましょう。
 会員の皆様には、本研究会学術集会に積極的にご参加いただき、ご指導ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。