代表世話人挨拶

井本滋
杏林大学医学部外科教授

 この度、北島政樹名誉代表世話人、愛甲孝代表世話人に続き、代表世話人を拝命致しました。この分野の発展に微力ながら努めて参りました者として身に余る光栄であります。センチネルリンパ節は、固形がんのリンパ行性転移を見張る、いわゆる「見張り」リンパ節です。90年代始めに悪性黒色腫でMorton先生が、乳癌でKrag先生、Giuliano先生が先鞭を付けられて、すでに20年が経過しました。最近では、胃癌、食道癌、大腸癌、頭頸部癌、婦人科癌など幅広い領域での臨床応用が検討されつつあります。センチネルリンパ節生検の目的は、pN0(sn)の際の非郭清による機能温存とリンパ節転移の同定に基づく適切な補助療法の選択にあります。各臓器癌の特性に応じて、手術、薬物、放射線の最適化が計られる時代ですが、センチネルリンパ節生検によって郭清の概念は大きく変わりました。
 とりわけ、乳癌は薬剤感受性と放射線感受性に優れていることから、今やセンチネルリンパ節に転移が存在したとしても非郭清が実地臨床に導入されつつあります。但し、郭清を省略したことで確率論的にあるいは生物学的に遺残している非センチネルリンパ節転移が何故顕性化しないのか解明されておりません。大規模な臨床試験の結果から非郭清でも大丈夫というだけでは、practiceになってもscienceではありません。
 一方、21世紀前半にも画像診断の分野で1ないし2ミリのリンパ節転移が確実に描出されるようになれば、その時点でセンチネルリンパ節生検の役割は終了するものと予想されます。それまでは、固形癌における郭清の個別化を推進すべく、本研究会の活動を加速して参りたいと願っております。

 最後に、本研究会の最も素晴らしい点は、リンパ節転移とその制御について、外科腫瘍医、放射線治療医、病理医、基礎研究者らが一同に介して多面的に議論し合う学術集会にあります。さまざまなideaから次の一手が繰り出される情報交換の場であります。これからも患者に優しい医療の実現を目指して参りますので、本研究会ならびに研究会による臨床研究へご参加いただき、ご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。