ニュースレター No.6 2001.3.19

第24回日本脳神経CI学会総会ランチョンセミナー
(Nuclear Neuroimaging Seminar)

SPMによる機能画像解析
福山 秀直(京都大学医学研究科附属高次脳機能総合研究センター)


はじめに

 SPMは英国ロンドンのハマスミス病院にあるサイクロトロンユニットで,K. Friston, R. Frackowiakらが,1990年ころから,PETによる脳賦活試験を効率よく検定するための方法として開発したものである.計算の原理などは,これまで,論文などに発表されているので,本論では,実際の使用方法について,どのようにしたらSPMが使えるのかを解説することにする.SPMの計算方法は,ボタンを押すことで,ステップを踏んで進めることが可能である.以下に,それらにつて,簡単な説明をすることにする.
 現在使われているのは,SPM99というバージョンで,Matlab version 5.xの上で動く.OSはWindows, Linux, Solaris, SGIなどである.なお,最新のバグフィックスもあるので,www.fil.ion.ucl.ac.ukで,確認してほしい.

1.Realignment図1
 賦活試験の場合,何回かのスキャン(PETなら,6−10スキャン,SPECTなら2スキャン)の画像の位置を正確に合わせる必要がある.SPMでは,最初の画像に後の画像を一致させ,また,平均画像も作成する.5mm以上のずれは修正できないので,別のソフトウエアで修正しておくか,または,Coregistrationを使うと,旨くいくことが多い.選ぶパラメータは,デフォルトが星印で示されているので,それらを選べば間違いはない(図2).ただし,Reslice interpolation methodで,sincを選ぶよりもtrilinearの方が,早くて,PETやSPECTには向いている.

2.Normalization図3
 基準となる脳に各個人の脳を変形して一致させ,あたかも同一の脳を計算しているかのようにするプロセスである.Realignmentと同様,デフォルトのパラメータを選べばよい.この場合,SPECTでは正規化するのに,非線形変換を使うか否かである.SPECTの場合,単に6から9個のパラメータでアフィン変換(要するにx,y,z方向の位置と回転方向を動かす)だけで,充分なことも多い.画質がよくない場合,非線形変換を使う必要はないし,パラメータも減らした方が結果はいいようである.

3.Smoothing図4
 正規化しても各個人の差異を吸収できないことがおおく,また,SPMの計算原理であるRandom field theoryでより効率よく異常部位が検出できるように,平滑化フィルターをかける.通常は,半値幅の2倍をかける.また,ボクセルのx,y,zが異なるような場合,それぞれの方向の平滑化フィルターの半値幅を変えることができる.

4.Statistics図5図6
 統計の方法は,メニューにいろいろ用意されている.SPECTの場合は,基本的に一人の被験者に1スキャンのデータであるので,メニューの下に用意された1scan/condを選ぶ.しかし,詳しい検定を行いたい場合は,これでは不充分なので,上の2つのSingle subjectのメニューを選ぶ.これは,すべてのスキャンを一人の人で行ったことにして,統計計算を行うことを意味する.こうしないと,SPMで用いている一般線形モデルによる解がえられないことがあるので,SEPCTの場合は,これを選ぶことにする.

 いわゆるジャックナイフ型の検定(一人の患者データと多数の正常者データの比較)もsingle-subject condition&covariateで行うことができる.

 統計のパラメータも,ほとんどデフォルトで計算することができる.SPECTの場合,Global normalizationは,絶対値の脳血流値がパトラック法などで計算してある場合は行う必要がないが,それ以外はANCOVAまたはProportionalで50なり100なりに全体のカウント値を整える必要がある.スキャンごとの値がかなり異なるので,一般にはproportionalで行うことが望ましい.

5.Results図7
 ここは,SPM96と大きく変わったところである.比較計算のモデルを一度作ってしまうと,それを,記録しておかなくても,データとして残してくれるので,何度でも統計の閾値や多重補正の有無などを変更して計算する場合,便利である.
 また,表示されたデータについて,プロットやROI,VOIによる解析,3次元MRIへのレンダリングなど,さまざまな,データの表示解析が可能である.カーソルをボタンの上に動かすだけで,そのボタンの動作が表示されるので,大変使いやすい.

 以上,SPM99の概略を解説し,そのメニューを図にしめした.これらを参考にして,SPMの解析が進めば,望外の喜びである.


(この論文は、2001年3月2日、第24回日本脳神経CI学会総会ランチョンセミナーの「SPMによる機能画像解析」というタイトルでお話いただいた内容を福山先生ご自身にまとめていただいたものです。)
スライドを大きくするためには、
clickして下さい。


図1 Realignment


図2 Realignment


図3 Normalization


図4 Smoothing


図5 Statistics


図6 Statisticsの詳細


図7 Results