第53回日本移植学会総会

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会長挨拶 第53回日本移植学会総会
会長 古川 博之
(旭川医科大学外科学講座 消化器病態外科学分野)

このたび、第53回日本移植学会総会を2017年9月7日(木)~9日(土)の3日間、旭川市のアートホテル 旭川・旭川トーヨーホテルにおきまして開催させていただくこととなりました。日本移植学会総会の旭川での開催は、1983年9月に旭川医科大学 第2外科 水戸廸郎教授(現名誉教授)が第19回を開催して以来、34年ぶり2回目となります。現在、教室員一同で、実り多き会となりますよう準備に尽力しております。

1965年に日本移植学会が設立され半世紀が経過しました。ちょうど、2014年に、日本移植学会50周年記念誌発刊のために、私が師事したスターズル教授にも寄稿していただくことになりました。そのやりとりをしているとき、スターズル教授から、「おそらく、当時の医師の中に先見性とリーダーシップを兼ね備えた人たちが日本にいたからだと思うが、」と前置きして、「どうして、日本の移植学会がアメリカを含む全世界の移植学会のどこよりも早く設立されたのか?」という疑問が送られてきました。1960年代当時の日本を振り返れば、心臓・肺・肝臓・腎臓などすでに日本でも臓器移植が開始されていたこと、また、当時、移植という医療が将来発展するだろうと信じて疑わない医師が結集して学会が開始されたことをお伝えしたところ、納得されたようでした。スターズル教授は、また、「多くの日本人が私の元にやってきたが、日本人の貢献なしには、臓器移植の多くの偉業は達成できなかっただろう」とも仰ってくれました。

世界でも最も早く移植学会を作り、学術的に優れた業績を世界に残してきた日本人、しかしながら、その貢献を日本で十分生かせているとは言えません。すなわち、臓器移植法の改正以降も、臓器提供数・臓器移植数(特に脳死下)については、世界から取り残されている状態が続いているからです。その結果、多くの移植待機患者が亡くなり、また、多くの志ある仲間が移植医療から離脱していきました。

今回の学会のテーマとして、「先人の貢献に感謝し、その志を後世に伝える」という言葉を掲げさせていただきました。これまでの移植を作り上げた先輩諸先生方の移植に対する情熱・貢献を振り返り、これに感謝すると同時に原点を見つめ直し、その志を十分生かせるような、すなわち十分な臓器提供数・臓器移植数に裏づけられた日本の移植医療を実現していきたいとの思いからです。参加者の皆さん、特に若い医療者にこれを伝えたいと思っています。

雄大な大雪山系の山々に囲まれた旭川市は、四季折々の表情が印象的な町ですが、会期にあたる9月はすでに秋の声が聞かれる頃で、山々は紅葉をいただき、成熟した農作物の収穫が始まる時期です。美瑛や富良野などの近隣観光にも絶好の季節で、美しい景観と北海道の豊かな食を十分にご堪能いただけるものと思っております。皆様のご参加を、教室員一同、心よりお待ちいたしております。