会長挨拶
第30回日本老年学会総会 会長 大島伸一
(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 名誉総長)
 第30回の伝統ある日本老年学会を担当させていただくことになり、光栄なことと心から感謝しております。
 もともとは泌尿器科医で、急性期の医療に従事してきた私が、国立長寿医療センター(現・国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)の発足にともなって、赴任したのは2004年3月です。以来、高齢者医療に関与し続けて参りましたが、高齢者の医療についてはまったくの素人であった私を温かく迎え、私の居場所をきちんと用意して下さった、日本老年医学会、そして日本老年学会の諸先生方には心から感謝申し上げたいと思います。
 10年前には世界一の高齢国で、高齢者が急増し認知症も増えると言われても、まだその実感が広く行き渡っておらず、どうも大変なことが起こりそうだという空気のなかにはありましたが、10年後の今では高齢化の影響が具体的な形で国民の生活のなかにはっきりと見えるところまで、進んできています。来るぞ来るぞと言っていた大津波が目の前にその姿を現し、すでに一部が巻き込まれ始めています。
 このような状況を見据えて本学会のテーマを“「治し支える医療」へ向けて、医学と社会の大転換を”とさせていただきました。これまでに経験したことのない社会にふさわしい医療は、そして社会はどうあるべきなのか。今の社会の変化にもっとも近いところに位置する学術集団である日本老年学会が、今、そして、これからの社会にどのように応えてゆくのか、日本中、世界中が注目しています。本学会では、このような問題意識のもとに、社会の要請に応えられるような内容にしたいと考えてきました。各分科会では、本学会のテーマに基づいて、新しい社会、新しい医療・看護・介護がどうあるべきかに向けてプログラムを準備しています。
 私たち老年学会が、これからの日本の指針の一翼を担ってゆくのだという自負のもとに、学会に参加し、これからの日本の姿を示していただきたいと願っています。