第12回日本再生医療学会総会開催にあたって
- 10年後を担う再生医療をめざして
会長 髙戸 毅
東京大学大学院医学系研究科外科学専攻
感覚・運動機能医学講座口腔外科学分野
東京大学医学部附属病院 ティッシュ・エンジニアリング部
東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター
ハーバード大学医学部子供病院の外科医JP. Vacantiとマサチューセッツ工科大学の化学者R. Langerが、足場素材に細胞を播種し、成長因子の存在下で組織形成を誘導するというTissue Engeering(組織工学)の概念を1993年にScience誌で提唱して以来、20年が経とうとしています。ヒトの耳の形をした再生軟骨を背負ったヌードマウスの写真は、世界中のマスコミに取り上げられ、再生医療を一躍有名にしました。その後、再生医療分野における研究は著しく発展し、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立などが報告され、まさに最先端の研究領域として脚光を浴び続けています。
その一方で、再生医療の本来の目的である臨床導入は十分には進んでおらず、世界的に見ても、患者の治療に活用できる再生組織は、皮膚、関節軟骨、角膜などに限られています。本邦でも、新しい再生医療が安全に患者のもとに届けられるよう、厚生労働省「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」などの指針、制度が整えられており、いくつもの臨床研究が進行中であります。しかし、薬事承認を受けた再生医療製品は再生表皮のみであり、失われた組織や臓器をあまねく再生、再建し、あらゆる疾患を治療できる夢の医療を実現するには、まだ道のりがあると言わざるを得ないのが現状です。
再生医療に対する熱狂的な期待が少し冷静になりつつある今日、改めて再生医療の現状を見つめなおし、10年後には医療の根幹を担うような再生医療になるためには、何が課題になっているのか、どのような取り組みをすればよいのか、ということを今一度、活発に議論できるよう、再生医療の導入を推進する臨床家の立場から、第12回日本再生医療学会総会を企画いたしております。
会員の皆様はもちろん、再生医療の発展と推進を志す方々にも多数ご参加いただけますように、鋭意準備を進めてまいります。何卒ご支援、ご指導のほどお願い申し上げます。
皆様のお越しを事務局一同、心よりお待ち申し上げております。