肛門疾患の治療は最近の10年間で大きく変化してきた。痔核に関しては、保存的療法と結紮切除療法、5%PAO硬化療法、ゴム輪結紮療法、分離結紮療法などが行われてきたが、最近の10年間でPPH、ALTA療法が加わり、結紮切除療法とALTAの併用も行われるようになった。適応も様々で本邦独自の進歩を遂げてきた。また、裂肛、肛門狭窄の治療においても、便通に対する生活指導や薬物療法による保存的治療から、用手肛門拡張術、単純裂肛切除術、側方皮下内括約筋切開術、皮膚弁移動術等の治療法がある。いかに裂肛、肛門狭窄を評価し、どの治療法を選択するのか議論の多いところである。
2014年に肛門疾患（痔核・痔瘻・裂肛）診療ガイドラインが発刊されたが、いかに標準化が進んだのか、問題点は何かを検討していただきたい。またガイドラインに合わせ、肛門疾患の標準化として現在我が国で認められる最も推奨される痔核、裂肛の治療法の診断、保存的治療から手術方法、成績、合併症などを具体的に述べていただき、標準化への更なる前進になるよう討論していただきたい。

機能性消化管障害とは慢性の消化器症状がありながら、その症状を説明できる器質的異常を認めない疾患である。世界的には、昨年新たにRome IIIからIV基準が公表され、年々新たな知見が集積されている分野である。本学会が取り扱う大腸や肛門の関する機能異常も含まれており、過敏性腸症候群、機能性便秘や機能性直腸肛門痛、機能性排便障害がこれに当たる。特に代表疾患である過敏性腸症候群についての最近の研究進歩はめざましく、脳腸相関に腸内細菌を絡めた斬新な研究の進展がある。そして、内臓知覚過敏がfMRIなどの脳画像の進歩により目に見える異常として捉えられる時代に入ってきた。しかし、まだまだ研究成果が日常診療にいかせる段階ではなく、今後益々の発展が期待される領域である。本シンポジウムでは肛門を含めた大腸機能疾患の病態、診断、治療の現状と今後の展開を共有したい。本学会の特徴を考えると、内科の観点のみならず、大腸肛門外科診療の観点からも有意義な議論ができることを期待する。

2000年以降、特に抗TNFーα抗体製剤の登場後、炎症性腸疾患の内科治療は急速な進歩を遂げ、患者の長期予後は改善されつつある。しかし、一方では長期間にわたって内科的に加療される結果、高齢化した患者や炎症性の発癌を合併する患者も増加している。また、各種の免疫統御療法が選択可能な時代となったため、緊急手術および待期的手術の適応やタイミングの判断はより難しくなり、それら薬剤を同時性、異時性に重複使用した結果、内科治療期間や周術期に日和見感染などの合併症を併発する症例も認められている。このような実態から、炎症性腸疾患患者の長期予後の改善のためには、患者の背景因子も考慮した内科治療の選択や、合併症への対策、炎症性発癌のサーベイランス、手術のタイミングを含めた内科と外科の緊密な連携が不可欠と考えられる。本セッションでは、これらの臨床的な諸問題について、内科と外科の両面から討議し、炎症性腸疾患診療のさらなる質の向上につながる様なシンポジウムにしたいと考えている。多数の演題の登録を期待します。

近年の大腸癌の治療において薬物療法が果たした役割は大きい。従来の殺細胞性抗癌剤に加えて、抗体製剤、マルチキナーゼ阻害薬などの分子標的薬の開発と、RAS遺伝子変異など薬物治療の効果を予測しうるバイオマーカー測定技術の発展により、切除可能大腸癌での術前および術後の補助化学療法、conversion surgeryを目指した治療、切除不能・進行再発大腸癌での化学療法のすべての局面で治療成績の向上が示されている。一方で、大腸癌治療ガイドラインをはじめ、NCCNやESMOのガイドラインで示される薬物療法の選択肢は年々複雑、多様化してきており、個々の症例でどのように治療法を選択するかが重要な鍵となっている。本シンポジウムでは「大腸癌に対する薬物療法の進歩と選択」をテーマとして、切除可能、切除不能を問わず、どのように治療戦略をたてて大腸癌患者の診療を行っているかを、種々の診療科の立場から発表していただきたい。

潰瘍性大腸炎(UC)術後の長期経過は良好でpouch機能率は累積20年で90%前後との報告が多い。一方で、約10%前後の症例は、合併症のために、肛門温存ができなかったことになる。その原因としては、難治性の回腸嚢炎や肛門周囲の瘻孔形成などが考えられるが、その詳細はまだ不明な点が多い。UCの術前と同じように、難治性の回腸嚢炎患者にも癌のサーベイランスが必要になるであろうか、という問題も今後議論しなければならない。また、pouch関連性の合併症のほかに、最近では、胃十二指腸や小腸病変が術後に増悪する症例報告も、特に本邦で増加している。さらに、関節炎や壊疽性膿皮症など、手術を行うことにより改善されると予想された症状が再燃する症例も存在する。このパネルディスカッションでは、各施設の現状を報告していただき、このような合併症に対し、どのような対策を取り、術後患者のQOLの向上に努めているのかを議論していただきたい。今まであまり取り上げられてこなかったテーマであり、内科・外科それぞれの立場からの幅広い応募を期待する。

直腸cTis (M) またはcT1 (SM)癌の治療においては, 根治性が前提ではあるものの, 肛門括約筋などの機能温存が重要である. 大腸癌治療ガイドライン医師用 2010年版までは最大径が 2cm を超えるものは手術を考慮するとなっていたが, ESDの普及により, 2014年版, 2016年版では「リンパ節転移の可能性がほとんどなく, 腫瘍が一括切除できる大きさと部位」にあれば, 大きさを問わず内視鏡摘除の適応とされた. 一方局所手術としては, 経肛門的, 経括約筋的, 傍仙骨的切除があり, MITAS, TAMISも経肛門的切除に含まれる. リンパ節郭清を伴う腸管切除は今や大多数が腹腔鏡下手術と思われるが, conventional DST, ISR、最近ではtransanal TMEを併用した術式も行われている. 内視鏡摘除. 外科手術, あるいはコラボレーションの立場から, まず施設全体の症例数を示した上で, 各種治療法の長所や問題点, さらにそれらの適応や使い分けについて討論して頂きたい。

以前大腸の鋸歯状病変は非腫瘍であり癌化することはないといわれていたが、最近では癌化の可能性のある病変でその過程では過形成性ポリープ→SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)→cytological dysplasia→癌、過形成性ポリープ→TSA(traditional serrated adenoma)→癌などの経路があることや、BRAF変異、CIMP、MSIなどの分子生物学的変化の存在も明らかになりつつある。しかしながら、癌化の危険性や発癌機序の解明は十分とは言えず、鋸歯状病への治療方針も確立されていないのが現状である。
本パネルディスカッションでは大腸鋸歯状病変の癌化までの組織学的変化、分子生物学的変化と拡大内視鏡所見も含めた臨床形態学的変化の討論に加え、癌化までのどの時点でどの様な治療が必要か、まで議論したい。 多くの演題応募を期待する。

本邦は世界の中でも有数の高齢化社会を迎えつつある。そのため癌患者の平均年齢も高くなり、癌と診断された際に癌以外の病気、つまり併存症を持つ症例も明らかに増加している。併存症は癌の治療成績に大きな影響を及ぼしうるため、併存疾患を持つ大腸癌に対してもより慎重な対応が必要となってくる。臨床現場では、認知機能障害、心臓疾患、糖尿病、高血圧、腎障害に加え抗凝固剤・抗血小板製剤内服を要する症例など、様々な病気の併発により通常の標準手術を断念せざるを得ないことも散見される。このような症例に対しては、手術以外の治療方法や根治性を落としてでも実現性を重視した縮小治療の選択も考慮される。本セッションでは、併存症を伴う大腸癌に対する治療選択の考え方や実態、今後の方向性を議論するとともに、他科との適切な連携体制の整備や各併存症特有の周術管理方法などにも言及していただきたい。

IBDの治療は，抗TNF-α抗体製剤やカルシニューリン阻害薬の登場により大きく進歩し，内科治療，外科治療に対する基本的な考え方や治療の目標も変化しつつある。しかし，その一方で患者数は増加の一途をたどり，長期経過例における新たな問題点も浮かび上がるなど新しい治療法の開発が期待されている。内科治療に関しては，さらなる治療成績の向上を期待した既存薬の使い方の工夫，新しい5ASA製剤やブデソニド，バルーン拡張やESDといった内視鏡治療の適応拡大などが試みられている。今後，使用可能となる薬剤はさらに増加する見込みである。外科治療に関しては腹腔鏡手術の適応拡大やロボット手術，クローン病に対する新しい吻合法などが行われ，その成績も明らかとなりつつある。また回腸嚢炎や排便機能障害といった術後合併症などに対しても，様々な新しい治療が試みられている。本パネルディスカッションではIBDに対する新しい治療の経験や工夫につき内科，外科それぞれの立場から活発な討論を期待したい。

大腸癌に対する腹腔鏡手術は年々その件数が増加しており、ステージII/III結腸癌やステージ0/I直腸癌では、わが国の大規模臨床試験にて、短期成績に加えて長期成績も明らかになってきた。このような背景の中で、腹腔鏡手術の手技の向上とその開発・改良は確実に前進しており、医工連携を踏まえて様々な最先端の技術も報告されてきた。
局所進行癌に対するNACやCRT後の術前治療後の症例や直腸癌に対する側方リンパ節郭清への導入、直腸癌に対する経肛門アプローチ法を用いた腹腔鏡下TME手術（TaTME）、近赤外線搭載のイメージング装置を用い血流・リンパ流に基づいた腹腔鏡手術、さらにはda Vinciを用いたロボット手術などが施行されその治療成績も報告されている。
本パネルでは、大腸癌に対する腹腔鏡手術の適応や手技における各施設の最先端を発表していただき、各手技の現時点でのメリットと問題点を明らかにし、腹腔鏡手術の今後の発展性について論じていただきたい。

近年の内科的・外科的治療の進歩は目覚ましく、IBDのQOL、予後は大きく改善した。しかし、IBDは慢性炎症を背景とした癌発生の高危険群であり、癌の早期発見およびその治療はIBD診療に残された大きな課題となっている。UCについては定期的な内視鏡サーベイランスが推奨されているが、その方法、初期病変の拡大内視鏡を含めた内視鏡像の特徴、再生異型や通常腫瘍との鑑別、治療ではQOLを考慮した術式の工夫、全ての症例・病変に大腸全摘が必要かなど、議論すべき点が少なくない。一方、クローン病においても近年癌化の問題が注目されているが、残念ながら進行癌となって発見される例が多い。また、本邦では直腸肛門管癌が多いといった特色があり、また多彩なクローン病の病変のなかから癌化巣を早期に発見することの困難さがある。クローン病ではいまだサーベイランス法が確立されておらず、厚労省班会議では精力的に作業が進められているところである。これらの多くの問題につき活発な議論を期待したい。

大腸癌患者の約1割に発生するとされる閉塞性大腸癌の治療方針は、従来は緊急手術でのハルトマン手術やストーマ造設を先行した上での切除、術中腸管洗浄や経鼻または経肛門的イレウス管などでの減圧治療後の一期的吻合など施設により治療方針は様々である。また近年では大腸ステントでの経肛門的減圧も導入され、Bridge to surgeryからの根治的手術も積極的に行われるようになった。しかし、大腸ステント治療における短期成績、および長期成績においてもエビデンスレベルでは不明な点も多い。また遠隔転移を伴う閉塞性大腸癌においても閉塞解除法の選択だけでなく原発巣手術の有無や、術前・術後を含めた化学療法の導入の有無や種類など、治療方針は各施設において大きく異なる。閉塞性大腸癌に対する治療方針について、各施設の治療方針の成績、利点および欠点を討議して頂き、本邦より閉塞性大腸癌における新たな治療指針の構築を深める討論を行いたい。

排便が問題なく行え、便禁制を維持して社会的・衛生的に快適な生活を送るためには、便性、肛門内圧、直腸肛門感覚機能、直腸内圧・容量・コンプライアンス、結腸機能、認知機能などが適切に保たれる必要があり、これらが障害されると便失禁や便秘などの排便障害が生じる。したがって排便障害診療において、肛門機能の評価は全てではないが重要な要素の一つであり、その肛門機能評価の方法として、肛門指診、直腸肛門内圧検査、直腸肛門感覚検査、陰部神経伝導時間検査などがある。また、排便造影検査、直腸バルーン排出検査、肛門筋電図検査も、便排出時の動態を評価するという意味では肛門機能評価法であり、さらには肛門管超音波検査も、肛門機能を支えている肛門括約筋の構造を評価するという意味では、広義の肛門機能評価のための検査とも言える。本パネルディスカッションでは、排便障害診療における肛門機能評価をより有意義なものとするために、これらの肛門機能評価の具体的な施行方法、得られた結果の解釈、臨床における活用法を発表していただき、その様々な問題点を討論したい。

様々な病態に応じたストーマ造設が行われ、それにより効果的な救命あるいは延命が行われています。しかしながら、ストーマ造設は非常に有効な手術手技である一方で、ひとたび合併症が起きると患者のQOLが低下する要因ともなっているのが現状です。本ワークショップでは、論点を明らかにするために社会復帰以降のいわゆる晩期合併症とその対策に焦点をあて、各施設で行われている合併症の発症の予防や合併症が発症した際の対応など様々な工夫を発表していただきたいと思います。
ストーマ関連合併症を、ストーマ合併症、ストーマ周囲皮膚合併症、代謝性合併症に分類（図）して討論を進めます。そして現状での問題点を抽出して、現状の課題や対策、その成果を確認して今後の取り組むべき方向性を明らかにするワークショップとしたいと思います。
なお、本ワークショップでは医師のみでなく看護職からの演題登録を歓迎いたします。奮ってご応募ください。

超高齢化社会を迎え、日常診療において骨盤臓器脱（Pelvic organ prolapse、以下POP）に遭遇する機会は増加してきている。大腸・肛門領域においては、直腸脱のみに注目しやすいが、子宮脱や膣断端脱、膀胱瘤が高率に併発することから直腸脱をPOPの一つと捉える必要があり、最近では泌尿器科や婦人科の専門領域を超えての横断的な討論も行われている。直腸脱では経腹的アプローチ、経肛門的アプローチの両者を各施設、術者が得意な方法で行っているが、超高齢者の罹患が増加するなかで手術リスクを評価したうえで適切な方法を選択する必要がある。今回のワークショップでは、POPの診断と治療をテーマに掲げ、各施設のPOPに対する診断や超高齢者に対する治療法の選択に当たっての手術リスクの評価方法、術式の選択を含めた治療戦略とその治療成績などに関して幅広く論じていただきたい。また、各施設で問題となっている要因があれば、それを他施設との議論を通じて解決できるワークショップにしたいと考えている。

近年の大腸・小腸疾患に対する画像診断や臨床検査法の進歩は目覚ましく、治療成績の向上にも大きく貢献している。画像診断においては、バルーン内視鏡およびカプセル内視鏡は小腸疾患の診断に変革をもたらし、多くの知見が集積されつつある。また、大腸腫瘍性病変の診断に対しては、様々な画像強調観察法(NBI，BLI， i-Scan, AFI)や拡大内視鏡が一般臨床で利用されるようになり，さらにEndocytoscopy，共焦点顕微内視鏡や分子イメージング内視鏡などの開発が進められている．こうした内視鏡検査法やCT・MRI検査などの画像診断技術の進歩は、大腸・小腸疾患の存在診断および質的診断の向上に寄与している。一方、臨床検査法においても、IBDに対するカルプロテクチンや便潜血検査などによる疾患活動性評価、さらにクローン病における抗Flagellin抗体、抗OmpC抗体などのような血清バイオマーカーの開発も進められている。大腸・小腸疾患の診断に関する様々なモダリティーの有用性，最新の画像診断や臨床検査法の現状や、各種検査法の組み合わせを含めた位置づけなどに関する演題を広く募集し、今後の展望などについても論議を行いたい。

女性は骨盤底の解剖学的構造が男性とは異なる上に、加齢とともに性ホルモン変動による身体への影響を受けやすく、肛門括約筋や骨盤底筋群の傷害から直腸肛門機能障害や骨盤臓器脱の発生を招くことがある。日本ではまだ性差医療という分野の認識が浅く、専門としては確立されていないため、女性の患者は婦人科、大腸肛門外科のどちらを受診すればよいのか選択に迷う。また、診療する医師も的確な診断や最適な治療が行えているかどうか現状としては疑問も多い。学会や研究会などでの女性特有の肛門および周辺の疾患について、詳しく勉強する機会は少ない。頻度は少ないが直腸膣瘻などは間違えると訴訟の憂き目にもあい、治療に難渋する症例もある.このワークショップでは、平素の肛門疾患以外に直腸膣瘻、会陰裂傷、直腸瘤（直腸膣壁弛緩症）などの女性特有の疾患と直腸肛門機能障害において、ご経験のある先生方の診断、治療の工夫などについて発表して頂き、壇上はもとよりフロアからも忌憚のないご意見を頂き、今後の日常診療に役立つような実り多き会にしたい。

通常の痔瘻の原因は、cryptoglandular infectionである。痔瘻の原因となる小孔を原発口、感染を持続させる原因となる部位を原発巣、原発口から原発巣までの瘻管を一次瘻管、原発巣以後の瘻管を二次瘻管とよび、連続性のあるものである。したがって最も基本的な痔瘻根治手術は原発口、一次瘻管、原発巣を切除または開放することである。これまで長い間、この基本的術式の基で、いかに根治させ機能温存を図るかの検討が行われてきた。しかしながら最近、基本に基づかない手術も行われている。この中には一次瘻管を残すなど、理論的に再発率が高くなると予想される術式もあり、あえてこのような手技を行うのは、それなりの考えがあるはずである。また術後に治癒遷延や再発などは期せずして起こる。そうならないようにするため、術式を改良するのみならず、執刀中や術後管理において様々な工夫や注意が払われている。本シンポジウムでは通常の痔瘻に対する諸家のポリシーと手術の原則を述べていただき、それに基づく手技や工夫をビデオで示していただきたい。発表後フロアを含めた総合討論を行い、明日からの臨床に役立つセッションにしたい。