会長挨拶

荒木栄一(熊本大学大学院循環器内科学) 2013年5月16日(木)から18日(土)の3日間、熊本市において第56回日本糖尿病学会年次学術集会を開催させて頂きます。メインテーマは『糖尿病学の進化と絆』といたしました。
 近年、糖尿病学・糖尿病医療は大きく発展してきました。これは、分子生物学や発生工学、再生医学等の目覚ましい進歩、創薬技術の革新、様々な大規模臨床研究や基礎研究が着実に計画・実施されたことによるものです。糖尿病や糖尿病合併症の成因に関する理解も年々深まってきており、さらに再生医療等を利用した新しい治療法の開発も進捗し、まさに「糖尿病学の進化」が起こっています。
 このように糖尿病学が目覚ましい進化を遂げる一方で、世界においてもわが国においても糖尿病患者数は増加し続けています。糖尿病の発症や合併症の進展という我々が直面している危機から脱出するには、糖尿病学の発展とともに保健—医療連携、チーム医療、地域医療連携、アジアはもとより世界との連携といった『糖尿病学の絆』が必要と考えます。
 糖尿病に携わる研究者・医師・コメディカルのみならず患者を含めた皆が『絆』によって結びつき、協力してさらに「糖尿病学を進化」させることが糖尿病克服に繋がるものと考えています。
 このような観点に立脚し、最先端の糖尿病の基礎研究や臨床研究から、治療・患者教育・発症予防の最前線、糖尿病における各種医療連携までをも網羅した学術集会にしたいと考えています。
 プログラムには、会長講演、特別講演2題、受賞講演3題、YIA審査講演、シンポジウム27題、教育講演31題、ディベート形式のDiabetes Controversy 6題、糖尿病劇場2公演を準備しました。 
 「特別講演」は、インスリンシグナル研究の第一人者C. Ronald Kahn先生とUKPDS等の大規模臨床試験をリードしてこられたRury Holman先生にお願いしました。基礎と臨床の両面から、世界のエキスパートの講演を聴くことができる貴重な機会となると期待しています。
 「シンポジウム」は、各分野のリーダーである座長の先生方に企画を練り上げて頂きました。「インスリン作用研究の進化と展望」や「糖尿病診療の絆」など、本大会のメインテーマと関連が特に強い8つのシンポジウムを「特別シンポジウム」としました。最先端の研究成果が報告される場であるとともに、チーム医療や医療連携の現状と課題を考える場にして頂きたいと思います。
 「血糖コントロールの目標値をどのように設定するか」などのまだ一定の見解が得られていないトピックについて、ディベート形式を採用し理解を深めていただく企画を、Diabetes Controversy と銘打っています。未決着な問題を整理し、解決への指針を会場からの討議も交えて提案できればと考えます。
 「教育講演」は、当該領域の第一線の座長および講師に行って頂きます。すべての教育講演を専門医資格更新のための指定講演としました。平日の学会参加が困難な先生方にも単位取得が可能なように、最終日にも12題を準備しています。
 今回初めての試みとして、「若手医師・医学生のための特別企画」と「一般演題・英語セッション」を計画しました。前者は、若手医師や医学生に糖尿病学に興味を持っていただき、造詣を深めていただくための特別プログラムで、18日(土)に開催いたします。後者は、「世界との絆」を意識したもので、糖尿病学を通じて国際的な交流を深めていただくとともに、海外に向けてわが国から糖尿病学を発信していく良い契機となればと期待しています。
 今回、過去最大の2700を超える一般演題登録を頂き心から感謝しています。例年最大級の演題登録のある糖尿病療養指導のカテゴリーを8細目に細分化しました。目次検索も容易となり、聴きたい演題を容易に見いだせると期待しています。ポスターでは、メイン会場として熊本市現代美術館を使用します。天井の高い広々とした芸術のための空間で、これまでにないポスターを体験下さい。ただし、混雑回避と安全確保のため、敢えてポスター会場を10会場に分散しました。周囲の雑音を遮り討議に集中できるオーディオツアー方式を全演題に採用しましたので、活発な討議をお願い致します。
 会場として、熊本城周辺と熊本駅周辺の12施設22(ポスターを含めると32)会場を使用いたします。会場間アクセスの不便さを解消するため、様々な工夫を行っています。お城周辺と駅周辺とは増便した路面電車と専用シャトルバスの2つの手段で結び、いずれも最長15分程度です。路面電車は渋滞知らずで、熊本の雰囲気も満喫できます。参加者には路面電車の無料回数券を配布しますので、ご利用ください。また、熊本空港と熊本駅新幹線改札内に参加受付を設置しますので、会場での混雑を避けてスムーズに学会を聴講いただけます。プログラムも出来るだけ会場毎に共通したテーマのシンポジウムや演題を配置しましたので、同一施設内で落ち着いて聴講できます。お城周辺の各施設間は、徒歩にて10分以内で移動できます。日頃運動不足の参加者にとってはよい運動の機会としてポジティブに捉えて頂ければありがたいと思います。
 「Morning Walk in Kumamoto Castle」は17日(金)の早朝に開催いたします。城内をめぐるコースを企画しましたので、熊本の歴史を学び自然に触れる良い機会となることと期待しています。申込は、本学会のウェブサイトからお願いします。
 スマートフォンやタブレット端末での抄録集ダウンロードやスケジュール管理は前回同様に準備いたしました。また、熊本Walk Map(熊本さるくマップ)を作製し、学会場周辺の地元情報も発信いたします。さらに熊本県で展開中の「ブルーサークルメニュー(レストランが提供する600kcal未満・塩分3g未満の美味しい糖尿病食)」も、この「熊本さるく」にてご覧いただけます。会期中に、熊本のシェフと管理栄養士が知恵を絞って腕をふるったブルーサークルメニュー(http://kumamoto-dmstaff.org/bcm/)を是非とも、御堪能ください。
 薫風の吹く5月の熊本は、新緑もまばゆいばかりに光り輝きます。最先端の糖尿病学に触れていただくとともに、熊本の美と味と自然を堪能していただきたいと思います。
 皆様の記憶に残るような、充実した学術集会にしたいと準備を進めております。奮って御来熊いただき、活発な討議へのご参加をお願い申し上げます。