沿革
日本小児消化管機能研究会初期の歴史
長嵜彰
1967年Nixonらがヒルシュスプルング病で直腸肛門反射が欠如していることが発表されて以後我が国でも直腸肛門内圧測定法応用する施設が現れ、特に1971年東北大学の鈴木宏志先生が米国での経験を発表されて以後は内圧測定法が急速に広まった。1975年、当時精力的に内圧を行っていた慶応義塾大学の横山穣太郎先生が術後代謝研究会の懇親会の席で九州大学の池田恵一先生に「内圧測定を行っている施設が一堂に会して情報を交換し合う場所か欲しい」と研究会設立の希望を述べられ、これを池田先生がその場に出席されていた東北大学の葛西森夫教授に話され、葛西教授も同意され、始まったのが直腸肛門内圧研究会であった。1975年6月第1回の研究会が葛西教授を会長として仙台で開催されたが、このときは午前中が胆道閉鎖研究会で、午後からが内圧研究会であった。最初の頃は参加施設も少なく、各施設がどのような器具を用いてどのように測定しているのかを見せ合う程度であった。第3回の岡本英三教授会長の時は実際犬を使って各施設が内圧測定の実技を披露するということも行われ、第4回の研究会では直腸肛門反射陽性の基準が討議され、大方の同意を得、現在まで使用されている。第6回より食道内圧も含まれ会の名称も小児消化管内圧研究会と変更された。それまで年2回開催されていたが、ある程度の内圧測定の基礎が共通に認識されたので第11回からは年1回の開催となった。内圧以外にも消化管機能研究に関する発表も行われるようになり、第15回からは現在の日本小児消化管機能研究会という名称になった。研究会が大きく発展することは大切であるが、大きくなるとどうしても広く浅くなる傾向があり、ひとつの問題を深く議論出来る場があることも必要と考える。その点、直腸肛門内圧に限った研究会は小さいながらも有意義であった。このようなことを行うには数年同じテーマで討論し続けるとか、ワーキンググループを立ち上げて一定の結論を出せるようになったらいいなと思う。余談であるが本研究会は2月に開催されることが多く、スキー場のホテルや温泉で行われることがあり、学術集会以外の楽しみもある。
日本小児消化管機能研究会の沿革
森川康英
本研究会は昭和50年6月14日東北大学において開催された直腸肛門内圧研究会(会長:葛西森夫教授)を第1回として発足した研究会である。ヒルシュスプルング病の診断法としての直腸肛門反射の測定と判定についての標準化が大きな目的であった。第1回研究会には8大学(東北大学、千葉大学、慶應義塾大学、日本大学、岐阜大学、兵庫医科大学、九州大学)より11題の演題が発表され、各施設の測定器具による成績とその評価が熱心に討議されている。その後の研究会では、各施設の測定器具を持ち寄って動物を用いた実際の測定の供覧が行われるなど、直腸肛門反射測定の標準化に大きな貢献をした。
その後、直腸肛門研究会は小児消化管内圧研究会、小児消化管機能研究会と内容、名称ともに発展し現在に至っている。
研究会発足から8年経過した1983年には我が国における消化管内圧検査に関する系統的なtext bookの嚆矢となる「消化管内圧測定法」(監修:葛西森夫、編集:池田恵一、勝俣慶三、岡本英三、鈴木宏志)が、本研究会における成果を基盤として26名の小児外科医により執筆、刊行された。従来、消化管内圧の測定に関しては生理学、外科学のなかで断片的に取り上げられて来たにすぎなかったが、本書は消化管内圧測定の基礎、応用、実際の測定法、判定基準に至るまで、まさに“消化管内圧測定のすべて”を示した当時の最高の到達点であり、30年以上経過した現在もいささかもその輝きは失われていない。
名 称 | 氏 名 | 開催地 | ||
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第1回 | 直腸肛門内圧研究会 | 葛西 森夫 | 1975.6 | 仙 台 |
第2回 | 直腸肛門内圧研究会 | 勝俣 慶三 | 1976.4 | 東 京 |
第3回 | 直腸肛門内圧研究会 | 岡本 英三 | 1976.1 | 兵 庫 |
第4回 | 直腸肛門内圧研究会 | 池田 恵一 | 1977.3 | 福 岡 |
第5回 | 直腸肛門内圧研究会 | 森田 健 | 1977.1 | 東 京 |
第6回 | 小児消化管内圧研究会 | 高橋 英世 | 1978.3 | 千 葉 |
第7回 | 小児消化管内圧研究会 | 伊藤 喬廣 | 1978.9 | 名古屋 |
第8回 | 小児消化管内圧研究会 | 国枝 篤郎 | 1979.3 | 岐 阜 |
第9回 | 小児消化管内圧研究会 | 鈴木 宏志 | 1979.9 | 津 |
第10回 | 小児消化管内圧研究会 | 矢野 博道 | 1980.3 | 久留米 |
第11回 | 小児消化管内圧研究会 | 葛西 森夫 | 1981.2 | 蔵 王 |
第12回 | 小児消化管内圧研究会 | 勝俣 慶三 | 1982.2 | 東 京 |
第13回 | 小児消化管内圧研究会 | 岡本 英三 | 1983.2 | 兵 庫 |
第14回 | 小児消化管内圧研究会 | 池田 恵一 | 1984.2 | 福 岡 |
第15回 | 日本小児消化管機能研究会 | 森田 健 | 1985.2 | 東 京 |
第16回 | 日本小児消化管機能研究会 | 高橋 英世 | 1986.2 | 千 葉 |
第17回 | 日本小児消化管機能研究会 | 坂田 一記 | 1987.2 | 岐 阜 |
第18回 | 日本小児消化管機能研究会 | 伊藤 喬廣 | 1988.2 | 名古屋 |
第19回 | 日本小児消化管機能研究会 | 鈴木 宏志 | 1989.2 | 津 |
第20回 | 日本小児消化管機能研究会 | 矢野 博道 | 1990.2 | 久留米 |
第21回 | 日本小児消化管機能研究会 | 岩渕 眞 | 1991.2 | 新 潟 |
第22回 | 日本小児消化管機能研究会 | 大井 龍司 | 1992.2 | 仙 台 |
第23回 | 日本小児消化管機能研究会 | 岩井 直躬 | 1993.2 | 京 都 |
第24回 | 日本小児消化管機能研究会 | 真家 雅彦 | 1994.2 | 千 葉 |
第25回 | 日本小児消化管機能研究会 | 横山 穣太郎 | 1995.2 | 東 京 |
第26回 | 日本小児消化管機能研究会 | 長屋 昌宏 | 1996.2 | 名古屋 |
第27回 | 日本小児消化管機能研究会 | 長嵜 彰 | 1997.2 | 福 岡 |
第28回 | 日本小児消化管機能研究会 | 渡辺 泰宏 | 1998.2 | 高 松 |
第29回 | 日本小児消化管機能研究会 | 豊坂 昭弘 | 1999.2 | 兵 庫 |
第30回 | 日本小児消化管機能研究会 | 加藤 哲夫 | 2000.2 | 田沢湖 |
第31回 | 日本小児消化管機能研究会 | 鈴木 則夫 | 2001.2 | 前 橋 |
第32回 | 日本小児消化管機能研究会 | 高松 英夫 | 2002.2 | 鹿児島 |
第33回 | 日本小児消化管機能研究会 | 伊川 廣道 | 2003.2 | 片山津 |
第34回 | 日本小児消化管機能研究会 | 友政 剛 | 2004.2 | 高 崎 |
第35回 | 日本小児消化管機能研究会 | 大浜 用克 | 2005.2 | 横 浜 |
第36回 | 日本小児消化管機能研究会 | 窪田 正幸 | 2006.2 | 湯 沢 |
第37回 | 日本小児消化管機能研究会 | 渡邉 芳夫 | 2007.2 | 愛 知 |
第38回 | 日本小児消化管機能研究会 | 嵩原 裕夫 | 2008.2 | 鳴 門 |
第39回 | 日本小児消化管機能研究会 | 岩井 潤 | 2009.2 | 千 葉 |
第40回 | 日本小児消化管機能研究会 | 高野 邦夫 | 2010.2 | 山 梨 |
第41回 | 日本小児消化管機能研究会 | 森川 康英 | 2011.2 | 東 京 |
第42回 | 日本小児消化管機能研究会 | 松藤 凡 | 2012.2 | 鹿児島 |
第43回 | 日本小児消化管機能研究会 | 八木 実 | 2013.2 | 久留米 |
第44回 | 日本小児消化管機能研究会 | 川原 央好 | 2014.2 | 大 阪 |
第45回 | 日本小児消化管機能研究会 | 池田 均 | 2015.2 | さいたま |
第46回 | 日本小児消化管機能研究会 | 植村 貞繁 | 2016.2 | 岡 山 |
第47回 | 日本小児消化管機能研究会 | 田口 智章 | 2017.2 | 福 岡 |
第48回 | 日本小児消化管機能研究会 | 仁尾 正記 | 2018.2 | 仙 台 |
第49回 | 日本小児消化管機能研究会 | 位田 忍 | 2019.2 | 大 阪 |
第50回 | 日本小児消化管機能研究会 | 河野 美幸 | 2020.2 | 金 沢 |
第51回 | 日本小児消化管機能研究会 | 漆原 直人 | 2022.2 | 静 岡 |
第52回 | 日本小児消化管機能研究会 | 金森 豊 | 2023.2 | 東 京 |
第53回 | 日本小児消化管機能研究会 | 中山 佳子 | 2024.2 | 松 本 |
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