会長 西口修平
兵庫医科大学 内科学 肝胆膵科 主任教授
この度、第54回日本肝臓学会総会の会長を拝命し、身に余る光栄と存じます。本会は、平成30年6月14日(木)、 15日(金)の2日間、大阪国際会議場、リーガロイヤルNCBで開催させていただきます。兵庫医科大学としては、東野一彌教授が第29回肝臓学会西部会を主宰させて頂きましたが、総会をお世話させていただくのは、今回が初めてです。このような機会を与えて頂きました関係各位の皆様に心より感謝を申し上げます。
今回のメインテーマは、「肝臓学の変革に挑むー新天地への船出―」とさせていただきました。HCVに対する抗ウイルス剤によりC型肝炎はほぼ根治できる時代となり、肝臓病の臨床は大きな変革期を迎えています。これからの新しい潮流を的確にとらえ、新知見の創生の場とするために、今回の学会には五つのコンセプトを編み込んでいます。
まず、主題示説として「肝硬変の成因別実態」を取り上げました。我が国の肝硬変や肝がんの成因調査は、私の恩師である大阪市立大学の山本祐夫教授が初めて取り上げてから35年が経ち、この間定期的に集計されています。今回の検討によって、我が国における肝疾患の成因の移り変わりと現状が把握できると期待しています。
第二は、肝臓学を幅広く鳥瞰し、すべての学会員にご参加いただく場とすることです。具体的には基礎医学、外科、放射線科、小児科領域のテーマも幅広く取り上げました。このため、主題の数を大幅に増やしています。また、座長はできるだけ新進気鋭の評議員にお願いし、その分野の権威には基調講演をお話しいただく構成としました。
第三は、研究の国際比較の場を設け、日本の独自性を確認することです。このために、Pinzani教授やSarrazin教授をはじめとする海外の第一人者4名に、まず海外における研究動向をそれぞれご講演いただき、その後同じテーマでシンポなどを行う構成としました。さらに、EASL Joint Meetingにおいて国際交流を図り、日本肝臓学会から世界に情報を発信し、その存在感を不動のものとする一助となればと考えております。
第四は、新天地への船出に際してその方向性を明らかにすることです。まず4名の理事にご講演いただく「肝臓研究の過去から未来への潮流」の特別セッションを設けました。次に、肝臓と糖尿病・代謝研究会を共催している日本糖尿病学会の門脇孝理事長に「糖尿病学会から肝臓学会への提言」をご講演いただきます。その後、沖田極先生、林紀夫先生、井廻道夫先生の歴代の理事長に、「肝臓学の将来」をテーマに鼎談をお願いしました。
第五は、若手研究者を対象に、教育セッション(Meet the expert)を設けたことです。このセッションでは、独創的な研究を行っておられる7名のエキスパートにご講演いただきます。それぞれのテーマに興味がある方に限定するために、事前登録方式を採用し、参加者を少人数にあえて絞るつもりです。
本学は、西宮市に位置しています。宮水が湧き出るため、灘の生一本で有名です。阪神タイガースの本拠地である甲子園球場、正月の恒例行事である福男選びで有名な西宮神社、堀江謙一氏が出帆した新西宮ヨットハーバーなどの観光地があります。学会のポスターも、西宮から大海原に漕ぎ出すイメージを帆船で表し、「新天地への船出」を具象化しました。また、学会は大阪で開催されるため観光スポットは無数にあり、安くて美味しい料理屋が綺羅星のごとく点在しています。今回の学会は2日間のため、日程がタイトですが、 是非阪神間の観光も楽しんでいただきたいと思います。
現在、教室員がアイデアを出し合い、学会を鋭意準備中です。皆様の知的好奇心を十二分に満たす工夫を、できるだけ多く盛り込みたいと意気込んでおります。積極的に演題をご応募いただき、多くの先生方にご参加いただきたいと存じます。